カンキツのマルドリ方式栽培に利用するための低コスト資機材

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要約

カンキツのマルドリ方式による栽培において、従来標準的に使用されている資機材に比べて低価格な資機材(マルチシート、点滴チューブ、液肥混入器)を使用すれば、10a当たりの導入コストが約30%削減できる。

  • キーワード:カンキツ、マルドリ方式、点滴かん水、低コスト化、マルチシート、点滴チューブ、液肥混入器
  • 担当:近中四農研・次世代カンキツ生産技術研究チーム
  • 連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・果樹
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

高品質な果実の生産が必須である現在、カンキツ栽培においてはマルドリ方式が果実の高品質化に有効である。一方、高品質な果実が高価格で販売されることが必ずしも保証されない現状では、マルドリ方式導入の低コスト化の要望が強い。
  そこで、標準的な資機材に比べて低価格な資機材を、マルドリ方式を導入したウンシュウミカン園に実際に導入して、その適用性を検討する。

成果の内容・特徴

  • 導入した低価格資機材は、標準的な構成ではコスト的に全体の中で占める割合が大きいものであり、具体的にはマルチシート、点滴チューブ、および液肥混入器である。表1に、標準的な構成の場合と低コスト資機材を導入した場合の10a当たりの導入コスト例の比較を示す。
  • 標準的なマルチシートの価格は約120円/m2であるのに対して低価格資材の価格は約80円/m2である。低価格資材の方が透湿性が低く、厚くて重いが、耐久性は高く、重量により風の被害を受けにくい。
  • 標準的な点滴チューブの価格は約190円/mであるのに対して、低価格資材の価格は約90円/mである。低価格資材の方が、チューブの肉厚が薄く、耐圧性、耐久性ともに低い。
  • 標準的な液肥混入器の価格は約65,000円であるのに対して、低価格機材の価格は約4,000円である。園地の状況によって、園地全体 に一斉にかん水を行わずに、園地を複数のブロックに分割して順次かん水を行う方法を取る必要がある場合がある。ブロックの面積にばらつきがある場合は、標 準的な液肥混入器であれば1台で問題ないが、低価格機材はブロック面積に応じて複数設置する必要がある。その場合の例として、10aに4個の液肥混入器を 設置するとすると、費用は16,000円である。
  • ひとつの園地に、標準的および低価格な資機材を同時に設置し、4年間栽培を行った。その収量と品質を表2に示す。両区画の品質に差異は認められない。収量は標準資材使用区の方がやや多いが、これは低価格資材使用区の方が導入前から樹勢がやや弱いことによると思われる。経年変化には差異は認められない。
  • 敷設したマルチシートの透湿度、耐水度、および引張強度の試験結果を表3に示す。強度に関しては、標準的な資材の方が速く低下する。
  • 点滴チューブおよび液肥混入器は、4年間の使用においては、特に問題となる劣化は全ての資機材において見られない。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、4年間の実証試験に基づくものであり、さらに長期間の使用による影響は不明である。
  • 低コスト資機材を使用する場合は、その特徴を十分に理解する必要がある。
  • 資材の価格は購入の状況によって大きく異なるので、ここで示したコストはあくまで参考値として取り扱わなければならない。

具体的データ

図1 液肥混入器の例

表1 10a当たり導入コストの比較

表2 収量と糖度の比較 表3 マルチシートの強度の比較

その他

  • 研究課題名:次世代型マルドリ方式を基軸とするかんきつ等の省力・高品質安定生産技術の確立
  • 課題ID:213-f
  • 予算区分:地域確立(カンキツ連年生産)
  • 研究期間:2003~2007年度
  • 研究担当者:島崎昌彦、星 典宏、森永邦久、草塲新之助