野菜の抗酸化活性測定に適する抽出溶媒は野菜の種類毎に異なる

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要約

野菜の抗酸化活性(DPPHラジカル消去能)は供試作物により抽出溶媒の検討が必要であり、適さない抽出溶媒を用いると栽培条件などによる変動が見過ごされることがある。ホウレンソウではメタリン酸抽出、タマネギではメタノール抽出が適している。

  • キーワード:抗酸化活性、DPPHラジカル消去能、ホウレンソウ、タマネギ、抽出溶媒
  • 担当:近中四農研・環境保全型野菜研究チーム
  • 連絡先:電話0773-42-0109 <
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(土壌)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

抗酸化活性は野菜の機能性の一つとして注目されている。抗酸化活性の主要な測定法であるDPPHラジカル消去能法は様々な抽出溶 媒条件下での測定が可能とされているが、野菜類の抗酸化活性においてもエタノール抽出による報告が多い。しかし、抗酸化活性に寄与する物質は様々であり、 アスコルビン酸が抗酸化活性に高く寄与していると考えられる作物種の場合は、エタノール抽出では十分に抗酸化活性を評価出来ない可能性がある。
   そこで、数種の野菜類に対して、80%エタノール抽出および5%メタリン酸抽出による抗酸化活性をDPPHラジカル消去能法により評価し、比較する。ま た、アスコルビン酸含量は5%メタリン酸抽出後、反射式分光光度計(メルク社RQフレックス)により測定する。さらに作期の異なるホウレンソウの抗酸化活 性について、80%エタノール抽出および5%メタリン酸抽出を用いて測定し、抽出溶媒の違いが抗酸化活性測定結果に及ぼす影響を明らかにする。また、体内 吸収後でも抗酸化活性が認められているケルセチンを多く含むタマネギの抗酸化活性測定に適した溶媒を検討する。

成果の内容・特徴

  • 供試した作物は、80%エタノール抽出液で強い抗酸化活性を示すもの(Aグループ)、5%メタリン酸抽出液で強い抗酸化活性 を示すもの(Bグループ)、どちらともいえないもの(Cグループ)に分けられる。これらはアスコルビン酸含量に対応しており、Bグループに分類される野菜 はアスコルビン酸が多い。また5%メタリン酸抽出液はエタノール抽出液の2倍以上の抗酸化活性を示すものもある(図1)。このように、野菜の抗酸化活性を評価するにあたっては、作物の種類や調査の目的によって抽出溶媒を検討する必要がある。
  • ホウレンソウのアスコルビン酸含量は冬期に比べて夏期に低下することが知られている。抗酸化活性について、80%エタノール 抽出液を用いて調べた場合はこの時期による変動を見ることは出来ないが、5%メタリン酸抽出液を用いると抗酸化活性も夏期に低下することが明らかとなる(図2)。
  • タマネギの抗酸化活性は用いた溶媒の中では80%メタノール抽出が適する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 作物の抗酸化活性を担う物質は多様であるため溶媒による抽出には限界があるが、栽培条件による影響など、作物毎の抗酸化活性変動を相対的に比較する場合に活用する。
  • 図1は同一作物における2種類の抽出溶媒による抗酸化活性の測定結果を比較したものであり、作物間の抗酸化活性比較は行っていない。
  • 逐次抽出による測定方法がAOAC標準法として検討中であるので、今後の作物毎の抗酸化活性変動研究においては、用いた溶媒抽出の寄与率を調べた上で簡便法として利用していくことが望ましい。

具体的データ

図1 数種野菜を80%エタノールと5%メタリン酸で抽出した場合の抗酸化活性(DPPHラジカル消去能)測定結果の比較

 

図2 ホウレンソウの抗酸化活性(DPPHラジカル消去能)季節変動の抽出溶媒による違い 図3 同一のタマネギ試料を異なる溶媒で抽出した場合の抗酸化活性測定結果の比較

 

その他

  • 研究課題名:中山間・傾斜地における環境調和型野菜花き生産技術の開発
  • 課題ID:214-u
  • 予算区分:基盤研究費、交付金(強化費)、委託プロ(食品)
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:福永亜矢子、池田順一、須賀有子、堀兼明、小森冴香