ポーラスカップを利用した蒸発計

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要約

蒸発量を簡単に測定する測器。ポーラスカップから蒸発した水量を塩ビ管内の水位の低下量として測定し、蒸発量を求める。平均気温を用いた補正により、ポテンシャル蒸発量に換算できる。

  • キーワード:蒸発量、蒸発計、ポテンシャル蒸発量、ポーラスカップ
  • 担当:近中四農研・暖地温暖化研究近中四サブチーム(兼:農業気象災害研究チーム)
  • 連絡先:電話0877-63-8128
  • 区分:共通基盤・農業気象
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

蒸発計は一種の熱収支計であり、その測定値は水収支の把握や農作物の灌水指標として利用される。蒸発量を最も簡単に測定する測器 は小型蒸発パンであるが、目視による測定と水の交換が毎日必要であり、生産現場で使うには取り扱いが煩雑である。そこで、蒸発量を簡単に測定する測器を開 発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した測器はポーラスカップ、透明の塩ビ管、ゴム栓から構成される(図1)。塩ビ管を水(水道水で可)で満たしてシリコン栓をし、測器を空中に吊すことにより測定する。ポーラスカップから蒸発した水量をポーラスカップの表面積で割ることにより蒸発量を算出する。ポーラスカップから蒸発した水量は、塩ビ管内の水位から求める。
  • この測器では、塩ビ管に水を満たしてからの積算蒸発量が測定される。1日あたりの蒸発量は前日の水位との差から求める。
  • この測器で測定した蒸発量は、ポテンシャル蒸発量や小型蒸発パンで測定した蒸発量と比較し、気温が低いほど大きな値となる(図2)。測定した蒸発量は次式により物理的な意味が明示されているポテンシャル蒸発量(近藤・除、1997)に換算できる。
        Ep=E/(2.07-0.0389×Ta)・・・・・・・・・(1)
    ここで、Ep:ポテンシャル蒸発量(mm)、E:測器で測定した蒸発量(mm)、Ta:平均気温(℃)。
  • この測器を気象観測露場および温室で使用した結果を図3、4に示す。測定した蒸発量のポテンシャル蒸発量換算値は小型蒸発パンでの測定値とほぼ一致し、本測器は屋外だけでなく温室での蒸発量の測定に使用できる。

成果の活用面・留意点

  • 蒸発量が簡単に測定できる。また、農作物の灌水指標に利用できる。
  • 塩ビ管内は負圧になるため、雨がポーラスカップに付着すると塩ビ管内に吸い込まれ、蒸発量が算出できなくなる。雨が当たる場所では図1のような無色透明の雨除けを取り付ける必要がある。取り付け位置は、図1に示す位置より下にならないようにする。
  • ポーラスカップはニッカトー製を使用。
  • (1)式の係数は地域によって異なる可能性がある。また、氷結時には測定できない。

具体的データ

図1 測器の構造および雨除け 図2 蒸発量の比と気温の関係

 

図3 気象観測露場での蒸発量測定 図4 温室での蒸発量測定

その他

  • 研究課題名:高品質安定生産のための農業気象災害警戒システムの開発
  • 課題ID:215-c
  • 予算区分:科研費(基盤研究C)
  • 研究期間:2007年度
  • 研究担当者:黒瀬義孝