乾田条播直播栽培による飼料用稲の生産技術体系

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要約

飼料用稲「クサノホシ」を、苗立数50本/m2を超えないことを目標に、播種量2.0~2.4 kg/10aの条件で4月下旬に乾田条播直播すると、倒伏させずに移植栽培と同等以上の収量を安定して得ることができる。

  • キーワード:飼料用稲、クサノホシ、乾田条播直播、多収、苗立数、播種量
  • 担当:近中四農研・中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話084-923-5354
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

飼料用稲生産は高額な専用収穫機を必要とすることから、個別農家や集落営農による取り組みは経営的に容易ではないので、今後の担い手はコントラクターとなることが想定される。ただし、このためには秋の収穫作業による労働ピークの緩和と併せて、育苗、移植等の春作業の労働ピークの緩和が必要となる。そこで、省力、低コスト技術として期待される乾田条播直播栽培を用いて、倒伏させずに多収を得る飼料用稲の生産体系を確立する。

成果の内容・特徴

  • 飼料用稲「クサノホシ」の乾田条播直播栽培(図1)では、春期に牛ふん堆肥を施用し、耕起した後、均平・整地を行う。基肥は被覆尿素肥料(LPS-40とLPS-120の1:1混合)を播種と同時に播種溝に施用する(窒素成分で約7 kg/10a)。
  • 雑草防除には、出芽直前に非選択性除草剤(グリホサート)、入水までに選択性除草剤(シハロホップブチル等)を1,2回、入水後に初中期剤を散布する。
  • 苗立数を増やすと穂数は増加する(r=0.84**;1 %水準で有意。データ省略)が、地上部乾物収量は増加しない(図2)。一方、苗立数が約50本/m2以上では、倒伏程度が2.5以上となり(図2)、収穫作業および製品である稲ホールクロップサイレージの品質に悪影響を及ぼす。このため、苗立数は50本/m2までとする。この播種方法で得られる苗立率は約40~60%であることから、播種量の目安は、2.0~2.4 kg/10aである。
  • 2004年から5年間、鳥取県岩美町の現地試験圃場(面積18.5アール、2筆)において実施した乾田条播直播栽培の収量は、平均で11.3ロールベール/10aであり、現地試験圃場がある岩美町(現地試験圃場以外は全て移植栽培。飼料用稲作付け面積26 ha;2008年)の平均収量よりも、平均で26 %高い(図3)。
  • 10 aあたりの労働時間は移植栽培の17.5時間に対して、乾田条播では10時間となり、大幅な労働時間の削減が可能となる。一方、10 aあたりの投下費用は機械の導入により減価償却費が増加するため、栽培面積が2.5 haでは移植栽培の47,318円を上回るが、5 haでは42,750円となり削減効果が得られる。

成果の活用面・留意点

  • 温暖地において、ディスク駆動式不耕起播種機(M社NSV-600B)を用いて、長稈穂重型の飼料用稲品種を播種した場合の情報である。
  • 苗立ちが不均一とならないように、播種前の圃場準備は入念に行う。
  • 技術体系の詳細は「飼料用稲生産技術マニュアル」を、経営的な解析の詳細は「飼料用稲の生産・利用による耕畜連携に向けて」を参照されたい(近中四農研のホームページからダウンロード可能 http://wenarc.naro.affrc.go.jp/tech-i/tech_index. )。
  • 牛ふん堆肥の適当な施用量は堆肥の副資材等の種類および土壌によって異なるため、稲の生育状況に応じて調節する(鳥取現地試験および福山場内試験では4 t/10aを施用)。また、堆肥を長期連用すると、乾田期間中に稲が土壌中の塩類過剰によると思われる生理障害(苗立不良等)を呈することがある。この場合は翌年1年間堆肥施用を行わない。

具体的データ

図1 飼料用稲「クサノホシ」の乾田条播直播栽培における作業工程と作業機械例

図2 苗立数と収量の関係

図3 飼料用稲の収量

その他

  • 研究課題名:直播技術を組み合わせた飼料用稲の飛躍的低コスト生産技術の確立
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:中山間耕畜連携、基盤
  • 研究期間:2003~2008年度
  • 研究担当者:藤本寛、高梨純一、堀江達哉、高橋仁康、大家理哉(岡山県農試)、芝宏子(岡山県新見農改)、
                       小林勝志(鳥取県農試)、中村広樹(鳥取県農試)