放牧を活用した黒毛和種経産牛肉の高付加価値化技術

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要約

産次が進み繁殖供用を終えた黒毛和種経産牛を放牧で仕上げることで、舎飼で肥育した場合や去勢牛と比べてα-リノレン酸や共役リノール酸を多く含む牛肉となる。また、食味は去勢肥育牛と比べてサーロインではやや劣るがヒレはほぼ同程度である。

  • キーワード:放牧、黒毛和種経産牛、食味、α-リノレン酸、共役リノール酸
  • 担当:近中四農研・粗飼料多給型高品質牛肉研究チーム
  • 代表連絡先:電話0854-82-0144
  • 区分:近畿中国四国農業・畜産草地
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

産次が進み繁殖供用が困難となった黒毛和種経産牛は、食肉としての市場価値は低いが、牛肉に付加価値を付けて消費需要を掘り起こすことができれば、繁殖農家にとって新規繁殖牛導入のための原資となる。また、高齢の経産牛であっても黒毛和牛としての美味しさは保持していると考えられることから、健康によい付加価値を付けることができれば、安全・安心・安価でヘルシーな牛肉を求める消費者ニーズに応えられる牛肉となり得る。さらに、放牧を活用することで耕作放棄地の有効利用と飼料自給率の向上にも貢献する。

成果の内容・特徴

  • 黒毛和種経産牛4頭をノシバ優占草地(3.8ha)に放牧する。試験区は表1のように設定する。腰最長筋(サーロイン)中の脂肪1gあたりの共役リノール酸(CLA)含量は、経産牛・放牧区のみで有意に多く含まれる(図1)。また、腰最長筋中のα-リノレン酸含量は、経産牛を放牧することによって最も多く含まれるようになる(図2)。
  • サーロインでは経産牛より去勢牛の肉がパネル全体の評価は高いが、最も柔らかい部位であるヒレでは経産牛と去勢牛で差はない。霜降り肉志向のパネルではヒレ、サーロインとも去勢牛の評価が高いが、経産牛のヒレは去勢牛のサーロインとほぼ同じ評価となる。赤肉志向のパネルでは経産牛・舎飼区ヒレの評価が最も高い傾向にある。(図3)

成果の活用面・留意点

  • 経産牛・放牧区、経産牛・舎飼区、去勢牛・舎飼区1頭ずつのサーロインとヒレを、45名のパネル(霜降り肉志向19名、赤肉志向19名、どちらでもない7名)に肉についての情報は伏せた上でホットプレートで加熱し食べ比べてもらい、4段階で評価する嗜好型官能評価試験を実施した結果である。
  • 本技術により生産した黒毛和種経産牛肉を消費者に販売する際には、食品偽装を防ぐため、繁殖の役目を引退した雌牛の放牧肥育牛肉である等の情報を明確に表示する必要がある。

具体的データ

表1.試験区の設定

図1.腰最長筋(サーロイン)中の脂肪1g

図2.腰最長筋(サーロイン)中のα-リノレン酸含量

図3.牛肉の官能評価

その他

  • 研究課題名:中山間地域の遊休農林地等における放牧を活用した黒毛和種経産牛への粗飼料多給による高付加価値化牛肉の生産技術
  • 課題ID:212-d
  • 予算区分:エサプロ、基盤、所特定
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:松本和典、柴田昌宏、小林英和、高橋佳孝