製粉性と製めん適性の優れる日本めん用硬質小麦新品種「ふくはるか」
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要約
小麦「ふくはるか」は温暖地・暖地に適する早生・短稈の硬質小麦で、小麦粉の粒度が大きいため製粉しやすく、また製粉歩留も高い。やや低アミロースで、生地物性が適度に強く、粉の色が明るく黄色みを帯びており、そうめんやうどんに適する。
- キーワード:コムギ、品種、硬質、製粉、めん用、そうめん
- 担当:近中四農研・めん用小麦研究近中四サブチーム
- 代表連絡先:電話084-923-4100
- 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
近畿中国四国地域は手延そうめんの生産量が全国の7割を占めるが、そうめんには輸入小麦が使われており、地元の小麦はほとんど使われていない。消費者の地元産志向の高まりを背景にして、地元産小麦を使ったそうめんの商品化も試みられているが、当地域の主要小麦品種は製めん適性が不十分でそうめん用には使いにくく、また製粉性(ふるい抜け)も良くない。そこで、単独で容易に製粉でき、そうめんをはじめとする日本めんに適した早生・短稈品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「ふくはるか」(旧系統名「中国157号」)は、1997年春に「羽系94-71」(後の「西海183号」)と「中系6168」(「中国140号」に由来するめん用硬質系統)を交配し、派生系統育種法で育成された。2008年秋の世代はF13である。
- 出穂期・成熟期ともに「シロガネコムギ」より1日早い早生種である(表1)。
- 稈長は「シロガネコムギ」と同程度に短く、ふの色は褐色である(表1)。
- 収量は「農林61号」より少なく,「シロガネコムギ」および「きぬいろは」とは有意差がない(表1)。
- 穂発芽耐性と赤さび病、うどんこ病の抵抗性は「シロガネコムギ」より強い(表1)。
- 硬質小麦で小麦粉の粒度が大きいため製粉しやすく、また製粉歩留も高い(表1)。
- アミロース含有率がやや低く(表1)、うどんの食感が優れ(表2)、そうめんの官能評価も高い(表3)。
- 粉の色は「シロガネコムギ」と同程度に明るく、黄色みはやや強い(表1)。
- 生地物性の強さの指標であるバロリメーターバリュウがやや高く(表1)、そうめんを作りやすい(表3)。
成果の活用面・留意点
- 温暖地・暖地の平坦地に適する。
- そうめんやうどんには適するが、粉の粒度が大きいためスポンジケーキには適さないと思われる。
- そうめん用とする場合は、タンパク質が11%程度になるよう実肥(出穂後の窒素追肥)を施用する。
- 硝子率が硬質小麦としては低く、栽培条件や年次により変動するため、外観検査の際に注意が必要である。
- 播性Iの早生種であり、早播きすると凍霜害の危険性が高まるので、適期より早く播かない。
具体的データ



その他
- 研究課題名:めん用小麦品種の育成と品質安定化技術の開発
- 課題ID:311-b
- 予算区分:交付金
- 研究期間:1997~2008年度
- 研究担当者:石川直幸、高田兼則、谷中美貴子、長嶺敬、髙山敏之、田谷省三、甲斐由美
- 発表論文等:品種登録出願(2008年10月22日,出願番号:第23062号)