新規参入者に対するグループ活動における相互支援の特徴と効果
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要約
新規参入者はグループでの活動を通じ、経営管理の情報を互いに頻繁かつ即応的に共有している。このような相互支援によって、作業管理・販売管理の意識が高まるとともに、グループが重要な経営管理の情報源になり、新規参入者の経営管理ノウハウの蓄積を後押しする。
- キーワード:新規参入者、グループ活動、相互支援、経営管理
- 担当:近中四農研・地域営農・流通システム研究チーム
- 代表連絡先:電話084-923-4100
- 区分:近畿中国四国農業・営農
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
農業への新規参入に対しては、指導機関によるサポートと並び、新規参入者のグループでの活動を通じた定着の促進が期待される。しかし、その活動の内容や効果は明らかにされていない。新規参入者のグループの活動で注目すべきは、新規参入までのプロセスや創業期における農業経営の実践という同質的体験をもとに、メンバーが互いに経営管理の情報を共有できることである。このような相互支援は、指導機関が提供することが難しい。また、多様な農家で構成される部会での活動に比べ、新規参入者に必要な創業期の経営管理に適合した情報の共有が期待できる。そこで、メンバーに多数の新規参入者を擁する香川県のイチゴ作のKグループを対象に、相互支援の特徴を整理し、経営管理の意識と情報収集に注目してその効果を明らかにする。なお、Kグループは、既存の部会とは異なる販路を開拓するなど2000年頃から活動を本格化している。
成果の内容・特徴
- Kグループのメンバーは、その他の新規参入者に比べ就農後の年数は短いにもかかわらず、栽培面積が大きく、高い経営成果を実現している(表1)。
- グループ内での活動を通じた相互支援では、頻繁かつ即応性の高い情報共有ができ、メンバーが各自の経営管理に反映させてタイムラグなく問題を解決できる利点がある。Kグループでは、栽培経験が少ない新規参入者が、他のメンバーとの比較検討による知識の蓄積や、問題発生時の原因特定を行いやすくすることを目的に、栽培技術と管理日誌を統一している。そのうえで、生産面では(1)日常的な携帯電話での相談や相互のハウス訪問、(2)重点時期における全員でのハウス巡回、販売面では、(1)定期・不定期での市場視察や農協担当者との会合、(2)週一回ないし一日おきの出荷に関する協議、という情報共有を実現している。
- グループにおける相互支援は、メンバーの経営管理意識を向上させる。Kグループのメンバーは、経営管理の中でも作業管理と販管管理の意識が高い(表2)。これは、出荷先からの情報を作業に反映させ、生産物の特性に応じた販売を行うという、生産・販売両面での個別対応的な管理を重視していることを示している。
- 相互支援によって、グループが新規参入者にとり重要な情報源になる。Kグループでは経営管理の情報を収集する者が多く、グループを主な情報入手先としている(図1)。このことから、グループ内での相互支援は、経営管理の意識と情報収集において、メンバーである新規参入者の経営管理ノウハウの蓄積を後押しする効果があるといえる。
成果の活用面・留意点
- 指導機関が新規参入者にグループの形成を動機づける際や、新規参入者の多い既存のグループにおいてメンバーが改善方策を検討する場合などに活用できる。
- 当該地域ではKグループのほかにも複数のグループが活動している。その中で、Kグループは既存の部会から独立して活動する部会である。新規参入者グループの形成、展開条件は別途検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明
- 課題ID:211-a.4
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2008年度
- 研究担当者:島 義史
- 発表論文等:島(2008)農業経営研究、46(1):129-132