モチ性裸麦「ダイシモチ」に対する実需者の評価

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要約

モチ性裸麦「ダイシモチ」に対して、実需者は、1)消費者間の認知度は低いが食味は高いと受け止められている、2)加工適性や食味は高いが色の白くない点は課題である、3)製造業などの業種で新商品の開発や販売の可能性が高い、と評価している。

  • キーワード:モチ性裸麦、ダイシモチ、実需者、アンケート調査
  • 担当:近中四農研・地域営農・流通システム研究チーム
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・営農
  • 分類:技術及び行政・参考

背景・ねらい

旧四国農業試験場で育成されたモチ性裸麦「ダイシモチ」は、優れた品種特性を有しているが、愛媛県の農業生産法人「A社」とその委託生産者が主に生産しているに過ぎない。「ダイシモチ」の生産および需要拡大を図るためには、実需企業における商品開発の動向、関連商品の市場における評価および今後の需要動向を把握する必要がある。そこで、A社から「ダイシモチ」を仕入れている実需者にアンケート調査を実施し、その評価を明らかにする。なお、21社に郵送で調査票を配布し、18社から回答を得た(回収率86%)。

成果の内容・特徴

  • 実需者は、株式会社または有限会社のいずれかであり、資本金、従業員数などをみると、大手企業から零細企業まで多様である。また、所在地は地元の愛媛県から東北地域まで広範囲におよぶ。「ダイシモチ」の利用状況から、これらの実需者を流通業、加工業、飲食店などの5業態に分類できる(表1)。
  • 実需者のうち、「ダイシモチ」を扱う以前からモチ性大麦を利用して商品を開発・販売した経験があるのは、和菓子メーカー、米穀流通業のわずかに2社である。
  • 消費者の「ダイシモチ」に対する認知度に関する実需者の評価は低い。評価の内容をみると、「低い」「やや低い」をあわせて約7割に達する(図1)。しかし、消費者の「ダイシモチ」の食味に対する評価については、実需者は高いと認識している。業態1~3および5では「良い」「やや良い」という評価のみである(図2)。したがって、消費拡大のためには消費者の認知度を向上させる取り組みが有効であると推察される。
  • 「ダイシモチ」の特徴を活かした商品開発の可能性に関する実需者の評価は、全般的に高い(図3)。「粉にして小麦粉と混ぜてパンやお菓子を作ることができる特質」「ご飯に入れると粘り、食味が良くなり、また冷えた後に硬くなりにくい長所」といった加工性や食味に関する評価は高い。しかし、「外皮に含まれている紫色のアントシアン」「小麦粉に比べると色が白くない特質」という色に関する評価は相対的に低いことから、この点が今後の利用上の課題として指摘される。
  • 新商品の開発や販売については、商品開発の可能性まで含めれば加工を行っている業態1が最も有望である(図4)。したがって、食品メーカーや菓子・パン製造業などの業者を中心に需要の拡大を図ることが重要といえる。
  • 実需者のほとんどは、A社からの供給量が十分であると評価しているため、A社における需要の拡大は取扱実需者数の増加によるところが大きいと推察される。

成果の活用面・留意点

  • A社とその委託生産者を合わせた「ダイシモチ」の作付面積は約50ha、取扱量は約130tである。

具体的データ

表1 A社から「ダイシモチ」を仕入れている実需者の業態(利用形態)別数

図1 「『ダイシモチ』に対する消費者の認知度」に関する実需者の評価

図2 「『ダイシモチ』に対する消費者の食味評価」に関する実需者の評価

図3 「ダイシモチ」の特徴を生かした商品開発の可能性に関する実需者の評価

図4 「ダイシモチ」を利用した新商品の開発や販売の可能性に関する実需者の評価

その他

  • 研究課題:地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明
  • 課題ID:211-a.4
  • 予算区分:加工プロ5系
  • 研究期間:2007年度
  • 研究担当者:齋藤仁藏
  • 発表論文等:齋藤・栁澤(2009)近畿中国四国農業研究センター研究資料、6:1-19