乳白様変異米を乾式粉砕すると損傷デンプンが少なく粒径の細かい米粉になる

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要約

粳米に生じる白濁部分では、胚乳デンプン粒間に空隙が存在し、白濁程度の大きい乳白様変異米は穀粒硬度が低い。乳白様変異米は、簡便に利用できるピンミルで乾式粉砕しても、損傷デンプンが少なく粒径の細かい粉になり、比容積の大きな米粉パンが焼ける。

  • キーワード:米粉、胚乳白濁系統、穀粒硬度、乾式粉砕、粒径、損傷デンプン、米粉パン
  • 担当:近中四農研・米品質研究近中四サブチーム、パン用小麦研究近中四サブチーム
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

米粉パン等への加工に適した損傷デンプンが少なくかつ細かい米粉は、精米に胚乳組織を軟化するための酵素処理を行った後、湿式気流粉砕することで製造される。乾式の米粉製粉用ピンミルは、湿式気流粉砕方式で必要となる高額で大規模な製粉設備や、複雑な製粉工程を必要としない。しかし、米の胚乳はデンプンが密に詰まった構造をしているため、乾式粉砕すると、酵素処理後に湿式気流粉砕した米粉よりも粗く損傷デンプンの多い粉になる。そこで、粉質として知られており、粉になりやすいと考えられる胚乳白濁変異米を用いて、試験粉砕機及び米粉製粉用ピンミルによる乾式粉砕での製粉特性を調査する。

成果の内容・特徴

  • 「コシヒカリ」を原品種とする胚乳白濁突然変異系統の胚乳には、デンプン粒が粗に詰まっており、デンプン粒の間に空隙が多数存在する(図1)。白濁の少ない心白様の系統(心白様変異系統)や白濁の大きな乳白様の系統(乳白様変異系統)等、様々な白濁の程度を示す突然変異系統では、白濁程度の大きな系統ほど穀粒硬度が低くなる傾向が認められ、乳白様変異系統は特に穀粒硬度が低い(図2)。
  • 穀粒硬度の低い胚乳白濁系統の玄米を試験粉砕機のサイクロテックミルで粉砕すると、「コシヒカリ」よりも損傷デンプンが少なく粒径の細かい粉になる(図3)。「ほしのゆめ」の粉質変異系統「北海303号」も、損傷デンプンが少なく粒径の細かい粉になる。
  • 精米を酵素処理後に湿式気流粉砕する方法で米粉を調製すると、いずれの系統でも損傷デンプンが1~3%と少なく、粒径中央値が17~42 mmの細かい粉になる(図4A, B)。
  • 米粉製粉用ピンミルによる乾式粉砕で精米から米粉を調製すると、「コシヒカリ」は損傷デンプンが9~11%と多く、粒径中央値が79~92 mmの粗い粉になる。穀粒が軟らかい胚乳白濁系統は、「コシヒカリ」よりも損傷デンプンが少なく粒径の細かい粉になり、酵素処理後に湿式気流粉砕した米粉に近づく(図4A, B)。
  • 乳白様変異系統は、ピンミルで乾式粉砕しても損傷デンプンが6~7%と少ない粉になり、これらの粉から作ったパンには、酵素処理後に湿式気流粉砕した米粉から作ったパンに近い比容積を示すものがある(図4A, C)。

成果の活用面・留意点

  • 乳白様変異米を利用することで、パン加工に適する米粉を簡便に得ることができる。
  • 湿式気流粉砕方式では、乳白様変異米は粉砕機の中に詰まりやすいため適さない。
  • 本研究で用いた「コシヒカリ」由来の乳白様変異系統は、精米時に砕けやすく歩留まりが悪いため、精米からの米粉製造コストについては別途検討する必要がある。
  • 米粉パンは、米粉80 gにグルテン20 gを混合し、砂糖5 g、食塩2 g、ショートニング10 g、ドライイースト1.5 g、水80 mlを加えてノータイムストレート法で作製したが、系統によって最適加水量が異なる可能性がある。

具体的データ

図1.玄米の外観と胚乳の構造穀粒断面の中心部に筋状の白濁が入るものを心白、周辺部まで白濁するものを乳白とした。

図2.様々な外観を示す突然変異系統の玄米の硬さ棒グラフは各突然変異系統における穀粒の硬さの平均値を示す。

図3.玄米の硬さとサイクロテックミルで粉砕した玄米粉の損傷デンプン・粒径中央値との関係

図4.市販製粉機による精米の製粉性の評価

その他

  • 研究課題名:イネゲノム解析に基づく品質形成生理の解明と育種素材の開発
  • 課題ID:221-d
  • 予算区分:基盤、委託プロ(加工)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:芦田かなえ、飯田修一、荒木悦子、池田達哉、安井 健
  • 発表論文等:Ashida K. et al. (2009) Cereal Chem. 86(2):225-231