マルカメムシが栄養生長期のダイズ生育に与える影響

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要約

栄養生長期のダイズでは、最も影響を受けやすい第2本葉期でもマルカメムシ成虫40個体/株以上でのみ主茎長が短縮する。影響の程度は、早期、長期間、高密度であるほど大きい。なお、程度はさらに低いが、総節数の減少、開花遅延等もおこる。

  • キーワード:マルカメムシ、ダイズ、栄養生長期、主茎長
  • 担当:近中四農研・中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

マルカメムシは西南暖地で発生が多く、ダイズに集合して寄生するため大きな被害を出す印象を与える。また、大発生時にはダイズが収穫皆無になるとの報告もある。しかし、本種はダイズの茎葉から吸汁する虫とされ、収量等に大きな影響を与えるとは考えにくい。但し、本種によるダイズ被害の様相やダイズの生育に影響を与える密度水準等の詳細は不明である。そこで、マルカメムシ成虫がダイズの生育にどのような条件でどのような影響を与えるのかを明らかにし、本種防除の判断材料とする。

成果の内容・特徴

  • マルカメムシ成虫100個体をワグネルポット(サイズ1/5,000a、以下ポットと略す。)で栽培したダイズに19日間放虫した。第2、第3、第5本葉期から放虫したダイズの主茎長(大幅な伸長のとまる開花はじめの子葉節~最先端節の長さ、以下同じ)は無放虫区のダイズと比較して、それぞれ46、33、24cm短縮し、短縮の程度は早期に放虫するほど大きい(図1)。
  • マルカメムシ成虫100個体を第2本葉期のポット栽培ダイズに、10、19、27日間、放虫した。無放虫区と比較した主茎長は、それぞれ31、46、55cm短縮し、短縮の程度は放虫期間が長期になるほど大きい(図2)。
  • マルカメムシの加害によるダイズへの影響が最も顕著に現れる条件下で、どの程度のカメムシ密度から影響が発生するかを検証するため、第2本葉期のダイズに、30日間、ポット当たり20、40、60、80、100成虫を放虫した。無放虫区のダイズと比較した主茎長の短縮は、カメムシ密度の高いダイズほど大きく、放虫密度40個体以上で無放虫区と有意差を生じる(図3)。また、虫の回収から約1カ月後の莢伸長期には加害の影響が減少するものの、100個体の放虫では総節数や総分枝数等が無放虫区よりも有意に減少する(表1)。また、開花も遅れる傾向にある(データ省略)。

成果の活用面・留意点

  • 2005年~2008年の6月と7月に播種した七つのダイズ圃場では、開花盛期までの栄養生長期には株当たりのマルカメムシ成虫の密度は4.3個体以下で、株当たりの最多個体数は15個体である。4月と5月に播種した四つの圃場では、株当たり密度は7.9個体以下、最多個体数は54個体である。54個体が寄生していた圃場での最多個体数は、第3本葉展開期までは10個体以下で、第7本葉展開はじめに最多の54個体となっている。しかし、この時期の全791株の調査では、40個体以上寄生した株の割合は1%、30個体以上でも2%に過ぎない。したがって、ダイズでのマルカメムシの防除は通常は不要と考えられる。
  • マルカメムシ成虫が莢や子実を加害するという報告が最近出された。マルカメムシは通常は莢や子実を吸害しないとされるが、成熟生長期の被害については検討を要する。

具体的データ

図1 マルカメムシの加害時期がダイズ主茎長に及ぼす影響

図2 マルカメムシの加害期間がダイズ主茎長に及ぼす影響

図3 マルカメムシの密度がダイズ主茎長に及ぼす影響

表1 ダイズの諸形質に影響を与えるマルカメムシの放虫密度1)

その他

  • 研究課題名:近畿・中国・四国地域における中小規模水田利用システムの開発
  • 課題ID:211-k
  • 予算区分:基盤、委託プロ(加工プロ)
  • 研究期間:2005~2008年度
  • 研究担当者:菊地淳志、小林秀治