大麦HINb-2の欠失を判別するDNAマーカーで穀粒硬度が高い系統を選抜できる
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要約
オオムギ種子タンパク質の1つであるホルドインドリンB2(HINb-2)が欠失した系統は穀粒硬度が高い。この変異を判別するPCR-RFLPマーカーにより育種の初期段階で穀粒硬度が高い系統を判別し、選抜できる。
- キーワード:オオムギ、穀粒硬度、SKCS、ホルドインドリン、DNAマーカー
- 担当:近中四農研・大麦・はだか麦研究チーム
- 代表連絡先:電話0877-62-0800
- 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物
- 分類:研究・普及
背景・ねらい
オオムギにおいて穀粒硬度は、加工コスト低減のため重要な形質の一つで、SKCS (Single Kernel Characterization System)を用いて測定する。穀粒硬度が低すぎる系統では砕粒率が高くなることが問題になっている。オオムギの種子タンパク質であるホルドインドリン(HIN)はコムギ穀粒硬度に関わるピュロインドリンと相同性を持つが、穀粒硬度へ影響するかどうかは明らかになっていない。そこで、HINをコードする遺伝子(Hina, Hinb-1, Hinb-2)の一つであるHinb-2の塩基配列情報を利用したDNAマーカーを開発して解析を行い、HINとオオムギ穀粒硬度との関係を解明する。
成果の内容・特徴
- 「四国裸84号」、「しゅんれい」、「ミハルゴールド」はHinb-2の305番目の塩基の欠失変異により読み枠がずれ、その下流に停止コドンができる遺伝子型(Hinb-2b)を持つ系統である(図1)。
- Hinb-2遺伝子に変異がない「四国裸115号」ではHINb-1とHINb-2が発現し、変異型Hinb-2bを持つ系統ではHINb-1のみが発現している(図2)。
- 「四国裸115号」と比べて、変異型Hinb-2bを持つ系統は穀粒硬度が有意に高い(表1(a))。
- Hinb-2遺伝子の塩基配列情報を用いて開発したPCR-RFLPマーカーは図1に示すプライマーと手順によって変異型Hinb-2bを持つ系統を判別でき、また、「四国裸84号」と「四国裸115号」のF2分離集団の解析でも同様に判別できる(図3)。
- 「四国裸84号」と「四国裸115号」のF2分離集団の解析において、変異型Hinb-2bホモの系統は、変異が無いHinb-2ホモの系統に比べて有意に穀粒硬度が高い(表1(b))。HINb-2欠失変異は穀粒硬度を高くする。
成果の活用面・留意点
- 本マーカーはHinb-2bの410塩基の変異を検出する共優性マーカーであり、ホモ個体・ヘテロ個体の判別が可能である。本マーカーを利用することにより、育種の初期段階から穀粒硬度が高い系統を判別し、選抜することができる。
- HIN にはHINb-2の他にもHINa、HINb-1があり、これらの変異も穀粒硬度に影響する可能性がある。
- β-グルカン含量も穀粒硬度に影響することが知られている。
具体的データ
その他
- 研究課題名:大麦・はだか麦の需要拡大のための用途別加工適性に優れた品種の育成と有用系統の開発
- 中課題整理番号:311d
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2009年度
- 研究担当者:高橋飛鳥、池田達哉、高山敏之、長嶺敬、柳沢貴司
- 発表論文等:1) Takahashi A. et al. (2010) Theor. Appl. Genet. 120 (3): 519-526