農産物直売所において欠品を避けるための需要量の推測

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要約

農産物直売所では、リターンタイム(RT:一日の販売点数の半数程度が売れる目安の時刻)の販売点数とその日の販売点数の間には強い相関関係があるため、この関係に着目することによって、需要量(期待できる販売点数)を推測でき、欠品回避に役立つ。

  • キーワード:農産物直売所、品揃え、欠品、残品、需要量、POSデータ
  • 担当:近中四農研・地域営農・流通システム研究チーム
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・営農、共通基盤・経営
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

農産物直売所では、欠品(売り切れ)が発生すれば、来店者が品揃えに不満を感じる恐れがあり、一方、直売所と出荷者は販売機会を逸してしまう。このため、欠品が生じないように適切な数量を確保・出荷することが重要であるが、欠品が生じた場合には、その品目の需要量(もし欠品が生じていなければ期待できる販売点数)を把握することは容易ではない。そこで、2つの直売所を対象に、POSシステムの販売記録(POSデータ)と納品伝票等から、欠品・残品の発生状況を把握した上で、欠品した品目の需要量を推測する。

成果の内容・特徴

  • 直売所では、販売点数が多い品目以外に欠品が頻発する場合がある。一方、販売点数が多い品目で残品(売れ残り)が多く発生する場合もあり、この場合には、売れ筋商品であっても出荷点数を抑制する必要がある。したがって、販売点数よりも欠品の発生状況に注意することが運営上重要である(表1)。
  • 欠品が生じた日でもその品目の需要量は、対象直売所ではリターンタイム(RT)に着目することで推測できる。残品が生じた日について、一日の販売点数の概ね半数程度が売れる時刻は、直売所・品目ごとにほぼ一定である。この時刻をRTとして設定する。なお、RTは直売所・品目によって異なる。
  • 残品が生じた日では、その日の販売点数と需要量は一致する。残品が生じた日のRTの販売点数とその日の販売点数(需要量)の間には強い相関関係がある(図1)。この関係は欠品が生じた日にも成立するとすれば、次のようにして需要量を推測できる。
  • 単回帰分析によって、残品が生じた日のRTの販売点数とその日一日の販売点数の関係を表すモデルを作成する(表2)。このモデルに、欠品が生じた日のRTの販売点数を当てはめ、その日の需要量を推測する。さらにRT以前に欠品が生じた日と出荷がない日について、平日休日別に前後の日の需要量の中間値をとることにより需要量を推測する。
  • この手法を利用すれば、例えば、A直売所のトマトでは、2007年の出荷期間内における需要量は実際の販売点数の131%と推測され、特に第33週以降の出荷点数が大幅に不足しており、次年は抑制栽培の拡大が有効であることが示唆される(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 推測した需要量は出荷点数の目安となり、次回の出荷、次年の生産の参考にできる。
  • 出荷点数を逐次確認している直売所では、本成果を応用してRTに、その日に売り切れるか売れ残るかを直売所スタッフが予測し、出荷者に予報を発することができる。
  • 直売所・品目によって、単回帰分析結果は異なる。なお、対象直売所はともに10万人規模の市町村内で、中心部から車で10~20分の位置にある。
  • 本成果を利用する場合には、直売所は日別品目別に販売情報を管理し、出荷点数もしくは欠品の発生状況を把握する必要がある。

具体的データ

表1</a> 月別販売点数最多品目の欠品日数割合と残品率(A直売所、2007年)

図1 リターンタイムと一日の販売点数

表2 リターンタイムと一日の販売点数の単回帰分析結果

図2 週別販売点数と需要量の推測結果

その他

  • 研究課題名:地域の条件を活かした水田・畑輪作を主体とする農業経営の発展方式の解明
  • 中課題整理番号:211a.4
  • 予算区分:基盤、科研費
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:吉田晋一
  • 発表論文等:吉田(2009)農林業問題研究、45(1):86-91