イチゴの密植栽培に対応した吊り下げ式高設栽培用ベッド間隔調節装置

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

吊り下げ式高設栽培において、通路入口のスイッチで複数のベッドを動かして所定の通路幅に自動的に広げられるベッド間調節装置である。栽植密度を慣行の1.5倍にしても株当たり収量は低下せず、駆動部関係部材削減により低コスト化も可能である。

  • キーワード:イチゴ、密植栽培、吊り下げ式高設栽培、ベッド間隔調節装置、低コスト化
  • 担当:近中四農研・中山間傾斜地域施設園芸研究チーム
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・農業環境工学、共通基盤・作業技術、野菜茶業・栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

吊り下げ式高設栽培ベッド可動装置(平成20年度共通基盤研究成果情報)を利用したイチゴ栽培では、栽植本数を慣行の約1.5倍に増やすことができ、単位面積当たりの増収が期待される。ただし、これまでの可動装置では、1ヶ所の通路に入るため複数のベッドを個別に動かすことから改善が求められており、合わせて装置の低コスト化も実現する必要がある。そこで、簡単な操作でベッドを連動して横移動させて作業通路を所定の幅に広げることができる低コストなベッド間隔調節装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 可動装置を備えた吊り下げ式高設栽培ベッドは、隣接ベッドの果実同士が接触しない状態にまで近づけて密植とするため、通路間隔を最小で約40cmまで狭めて配置する。ハウス間口6mで7ベッド(慣行5ベッド、1.4倍)、同8mで9ベッド(同6ベッド、1.5倍)が配置できる(図1)。
  • ベッド間隔調節装置は、任意の通路入口または出口に設置した1つのスイッチを押すと、自動的に複数のベッドが連動して動き、通路を所定の幅(約1m)にまで広げられるようにしたものであり操作が容易である。
  • 高密植栽培による株当たり果実収量の低下はなく、単位面積当たりで約1.5倍の増収となる(図2)。
  • ベッド間隔調節装置も含んだ資材コストは、間口8m、長さ39m、敷地面積3.1a規模のハウスにおいて約150万円である(表1)。
  • ベッドを長さ約5mのパイプで連結し、1つの駆動モータで2ベッドを動かすことでラック・ピニオンなどの駆動部関係部材を半減させる。図3の9ベッド配置(中央は固定ベッド)では、これまでの全てのベッドに駆動部を取り付ける場合に比べ、資材コストを約2割削減できる(表1データをもとに試算)。

成果の活用面・留意点

  • 吊り下げ式高設栽培ベッド可動装置については、生研センターから出された平成20年度共通基盤研究成果情報「イチゴの高密植栽培が可能なつり下げ式高設栽培ベッド可動装置」の機構を採用している。
  • 補強用の水平梁がないハウスについて、高密植吊り下げ式高設栽培ベッドを導入するためには、3mピッチで水平梁(高さ約2m、縦75mm横45mm肉厚2.3mm)を設置する必要がある。間口6mを超える場合には水平梁のたわみを防ぐため中柱(50mm角パイプなど)を取り付ける。
  • 長さ33mのベッドの可動では、2ベッドを連結しても1ベッドと同じ駆動用モータ(DC24V、34W。ハウス側窓巻き上げ用)で十分である。

具体的データ

図1 吊り下げ式高設栽培ベッドの配置例

図2 高密植栽培での増収効果

表1 ベッド間調節装置付吊り下げ式高設栽培ベッドの主な資材とコスト

図3 9ベッド配置での設置状況

その他

  • 研究課題名:中山間・傾斜地の立地条件を活用した施設園芸生産のための技術開発
  • 中課題整理番号:213c
  • 予算区分:委託プロ(担い手)
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:長﨑裕司、中元陽一、田中宏明、畔柳武司、林茂彦、河野靖(愛媛農水研)