シソ青枯病の二次伝染を防止する収穫機の刈刃殺菌のための効率的加熱手法

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要約

加工用赤シソの収穫で問題となっている収穫機刈刃を媒体とした青枯病の二次伝染を防止するために開発した、刈刃押さえ板に電熱ヒータを組み込む加熱方式は、殺菌効果が得られる90°C以上に効率的に加熱でき、リード線の断線の心配もなく取扱性がよい。

  • キーワード:赤シソ、青枯病、二次伝染、加熱殺菌、刈刃加熱
  • 担当:近中四農研・中山間傾斜地域施設園芸研究チーム(兼:環境保全型野菜研究チーム)
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・農業環境工学
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

加工用として作付けされている露地栽培赤シソ栽培では、土壌伝染性の青枯病の発生が問題となっており、近年の運搬車に搭載した茶摘採機による一斉収穫が普及するのに合わせ、発病株から刈刃に病原菌が付着し健常株に伝染する二次伝染も発生している。90°C以上に刈刃を加熱することで二次伝染が抑制できることから、取扱性の良い電熱ヒータによる効率的加熱殺菌手法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した電熱ヒータによる加熱手法は、刈刃押さえ板に電熱ヒータを装着し(図1)、間接的に刈刃を加熱殺菌する。このため、刈刃にヒータを直接装着する際に問題となるリード線の断線は生じない。
  • 刈刃押さえ板への電熱ヒータ取付では、加熱による押さえ板の変形を防ぐため、市販茶摘採機に標準で装着されているアルミ板を鋼板に変更する。
  • レシプロ方式の茶摘採機は切断をおおむね刃先で行っていることから(図2)、押さえ板で刈刃の台形刃(高さ30mm)の下半分を覆い、ヒータから刃先までの距離を小さくすることで効率的に加熱できる。この状態でも刈り残しなどの性能低下は生じない。
  • 電熱ヒータに装着面が少なくて済むアンテナ状に加工したマイクロシースヒータを使用することで、約1kWの容量で幅約1mの刈刃を90°C以上に加熱できる(図3)。
  • 刈刃以外にも発病株切断面に接触が懸念される茶摘採機裏面には300Wのシリコンラバーヒータを装着する(図1)。押さえ板のマイクロシースヒータと合わせても1.6kW級の小型発電機で対応できる。
  • 荷台高さを容易に変えられる動力付運搬車、または図4のような刈高さの微調節を可能とする機構を組み込んだ台車に、加熱装置組み込み茶摘採機を前装することで赤シソの機械収穫は問題なく行える。

成果の活用面・留意点

  • 本加殺菌熱方式は、2010年度に普及・実用化を予定しているメーカーの実用機に採用されている。
  • 電熱ヒータによる加熱では台車に発電機を搭載する必要があることから、台車、茶摘採機のエンジンと合わせ計3台搭載することなる。台車に電動運搬車を適用するとエンジン数を削減できる。
  • 二次伝染抑制効果は、平成16年度近畿中国四国農業研究成果情報での「シソ青枯病の二次伝染を抑制できる刈刃加熱装置の開発」に基づいている。
  • 朝露が残っている状態や小雨での収穫では、刈刃温度が低下することから、ヒータのコントローラの設定温度を高めにするなどの対策が必要である。

具体的データ

図1 押さえ板加熱でのヒータ取付状況

図2 高速度撮影によるシソ切断画像

図3 刃先温度の変化

図4 電動運搬車に装着してのシソ収穫

その他

  • 研究課題名:中山間・傾斜地における環境調和型野菜花き生産技術の開発
  • 中課題整理番号:214u
  • 予算区分:実用技術
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:長﨑裕司、松崎健文、田中宏明、中元陽一、小谷基文(愛媛農水研)、崎山進二(愛媛農水研)、密田和彦(愛媛農水研)、青井俊雄(愛媛農水研)、楠元智子(愛媛農水研)、豊田和範(マメトラ四国機器)、岩上久仁男(マメトラ四国機器)、山下純(愛媛大)、疋田慶夫(愛媛大)、川崎哲郎(愛媛大)
  • 発表論文等:長﨑ら(2010)農作業研究、45(1):45-49