一斉開花栽培に対応した小ギク収穫機

要約

刈り取り部と切り花収容部およびフラワーネット回収装置を備えた小ギクの一斉収穫機である。切り花に損傷を与えることなく刈り取りでき、慣行の収穫布を用いて切り花を結束できる。搬出台車との組み合わせにより、収穫作業時間を38%~65%削減できる。

  • キーワード:小ギク、一斉開花栽培、省力化、収穫機、フラワーネット回収
  • 担当:近中四農研・環境保全型野菜研究チーム
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・農業環境工学、共通基盤・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

小ギク生産における収穫作業は、圃場全体を見回って出荷適期の花を判断しながら1本ずつ採花する選択収穫方式であるため、多大な労力を要し、全労働時間(600人・時/10a)の25%に達している。そのため、規模拡大の制限要因となっている収穫作業の省力化を目的として、開花のばらつきを少なくする一斉開花栽培技術や品種が開発されつつある。そこで、一斉開花栽培に対応した小ギクの機械収穫技術を開発し、収穫作業の省力化を図る。

成果の内容・特徴

  • 本機は畝幅120~150cm、畝高さ10~30cmの畝を跨いで走行し、畝面から一定高で切断する刈り取り部、切り花を保持し後方へ送る搬送部、切り花を収穫布に集める収容部およびフラワーネット(以下、ネット)の回収装置で構成される(図1)。2条または4 条で植栽された小ギクを約15~20cm/sの作業速度で刈り取ることができる(表1)。
  • 収容部には慣行の収穫に使用されている収穫布を20枚程度(50m分)搭載できる。約200本刈り取るごとに収穫機を停止し、切り花を結束して束にする。束の搬出には4輪の手押し搬出台車が利用できる。束は収穫機から後続させた台車に直接積み替えるか(図2上)、一旦畝の上に置き、まとめて回収する(図2下)。
  • 本機を用いた収穫作業では、事前に切り花を支持する支柱やネットを除去する必要がある(図2上)。ネット除去により倒伏するような軟弱なキクに対しては、先ず支柱のみを除去しておき、ネットを回収しながら刈り取りを行う。この場合、機械前方に補助者2名を配置し、キクとネットの分離および収穫機へのキクの誘導を行う(図2下)。
  • 収穫機と搬出台車(6束積載)を組み合わせた収穫・搬出作業における10a当たりの作業能率は、事前作業工程も含めて12.8人・時(2名作業時)および16.3人・時(4名作業時)であり、慣行の選択収穫方式に対して65~55%、一斉収穫方式に対して51~38%の労働時間を削減できる(表2)。
  • 収穫機で刈り取ったキクは茎には損傷が認められず、葉の損傷は主に切り口から20cm以下の下葉(出荷時には取り除く部分)である(表2)。また、結束後の茎の切り口の揃いは20cm以内であり、収穫後行う水揚げ水深の範囲内である。

成果の活用面・留意点

  • 本機は、沖縄県、奈良県で現地実証を行っており、170万円前後で市販予定である(平成24年度予定)。
  • 機械収穫のための一斉開花栽培技術や適品種、および機械収穫した適期に満たない未開花茎を人工的に開花させる関連技術が開発されている(「小ギクの一斉機械収穫・調製システムの開発 研究成果概要集」、奈良農総セ発行、2011.3)。

具体的データ

図1 小ギク収穫機

表1 収穫機主要諸元および適用栽植様式

図2 収穫機+搬出台車による作業方法 (上:2名作業、下:4名作業)

表2 作業能率および収穫精度

その他

  • 研究課題名:中山間・傾斜地における環境調和型野菜花き生産技術の開発
  • 中課題整理番号:214u
  • 予算区分:基盤、実用技術
  • 研究期間:2006 年~2010 年度
  • 研究担当者:田中宏明、中元陽一、松崎健文、長崎裕司、仲 照史(奈良農総セ)、平岡美紀(奈良農総セ)、角川由加(奈良農総セ)、渡邊武志(沖縄農研セ)、儀間直哉(沖縄農研セ)、陶山 純(みのる産業(株))、山本 明(みのる産業(株))、本荘絵未(みのる産業(株))河合正志(みのる産業(株))