極短穂高糖分飼料イネ「たちすずか」の種子生産に適した栽培法

要約

極短穂高糖分飼料イネ「たちすずか」は、温暖地平坦地帯では、6月下旬の2条並木植えで少肥条件であれば、約300 kg/10aの種子収量を期待できる。

  • キーワード:高糖分飼料イネ、たちすずか、種子生産、栽培法
  • 担当:近中四農研・中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話084-923-5360
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

高糖分飼料イネ「たちすずか」は、極短穂であることから籾に貯蔵される炭水化物が茎葉部に糖として貯蔵されるため、飼料としてのイネWCSの高品質化が期待できる。また、極短穂であることから耐倒伏性にも優れる。このように「たちすずか」が極短穂であることは様々な長所をもたらしているが、種子生産量が少ないことが問題である。そこで、種子生産に影響を及ぼすと考えられる要因について検討し、「たちすずか」の種子生産に適した栽培法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 極短穂高糖分飼料イネ「たちすずか」は、風選により選別した精籾収量(種子収量に相当)と黄熟期地上部乾物重との間に有意な負の相関関係があり、植物体を大きく育てると種子収量は減少する。一方、穂重型品種「クサノホシ」では、両者の間に高い正の相関関係があり、植物体を大きく育てると種子収量は増加する(図1)。
  • 「たちすずか」の精籾収量は、作期、栽植様式、基肥量、穂肥施用の4要因の組合せにより、最低は約20 g/m2から最高300 g/m2以上まで大きな変動を示す(表1)。
  • これら4要因が「たちすずか」の精籾収量に及ぼす効果は、作期の場合、早植えの平均が75 g/m2に対し、遅植えの平均は209 g/m2であり、遅植えを選択することで早植えより134 g/m2増収する。栽植様式では、30 cm条間の標準植えよりも2条並木植え(条間を30cmと60cmに交互にとる)が78 g/m2増収し、基肥量では、多肥よりも少肥が47 g/m2増収する。一方、穂肥施用の有無は精籾収量に影響しない(表2)。
  • 「たちすずか」の精籾収量が最も高くなる組合せは、遅植え×2条並木植え×少肥であり、平均収量に有意である要因の主効果および遅植えと並木植えの交互作用を加えて算出される期待種子収量は299 kg/10aである(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 温暖地において種子生産を行う際の情報である。本成果は、2010年に近中四農研圃場(広島県福山市、標高2m)で実施した結果であり、出穂期は、早植え:8月29日、遅植え:9月4日、成熟期は、早植え:10月8日、遅植え:10月15日である。
  • 上記の精籾収量が高くなる組合せを用いて、2010年に近中四農研圃場(10 a)において種子生産を行い、収量363 kg/10a、発芽率98%の種子を得ている。
  • 本成果は、要因効果を明らかにするために実施した試験に基づく情報であり、最高収量を得るためには、種子生産地において各要因の最適水準について検討する必要がある。特に遅植えを適用する際は、好適出穂晩限を事前に確認しておく必要がある。
  • 一般的に考えられる多収栽培法である早植え(5月10日)×標準条間×多肥(窒素成分で14 g/m2)とした場合、期待収量は39 kg/10aとなり(図2)、大幅に減収することが想定されるため、種子生産に取り組む生産者に対し事前に周知する。

 具体的データ

図1 . 地上部乾物重と精籾収量の関係

表1. 要因と水準および精籾収量

図2. 期待収量

表2.精籾収量に及ぼす要因の効果と寄与率

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした飼料用稲低コスト生産技術及び乳牛・肉用牛への給与技術の確立
  • 中課題整理番号:212b.4
  • 予算区分:交付金プロ(次世代耕畜連携)、基盤
  • 研究期間:2009-2010 年度
  • 研究担当者: 藤本寛、佐々木良治、松下景