地下水位制御システム(FOEAS)を利用した大豆の梅雨明け後播種栽培

要約

FOEASによる土壌水分制御は大豆の梅雨期と梅雨明け後播種の両方で出芽率を向上させる。梅雨明け後播種では、播種数日前に水位を一時的に高めると69~87%の出芽率が期待でき、7月下旬播種した場合では300g/m2程度の子実収量が見込める。

  • キーワード:FOEAS、地下水位制御システム、大豆、晩播
  • 担当:近中四農研・中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話084-928-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

西日本の大豆作では6月から7月に播種されることが多いため、梅雨により播種できないことや、播種できても出芽・苗立ちが著しく不良となることがある。一方、梅雨明け後は天候が安定するが高温で経過するため土壌の過乾燥により出芽不良となるリスクは避けられない。そこで、FOEASにより土壌水分を制御して梅雨期ならびに梅雨明け後播種の出芽の安定化を目指すとともに梅雨明け後播種栽培の可能性を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 7月上旬に播種した「サチユタカ」の出芽率は、FOEASにより降雨後の圃場表面滞水を回避することで83~89%と安定して向上する(表1)。
  • FOEASの水位調節機能を利用して地下水位を高めることにより、梅雨明け(2008年の中国地方は7月6日)後の高温・寡雨下であっても土壌水分を高めることができる(図1)。
  • 梅雨明け後は、播種数日前に一時的に地下水位を高め種子近傍の土壌水分を高める制御法(水管理III)により出芽率69~87%が得られので、出芽率の向上に効果的である(表1、2007年8月1日播種、2008年7月24日~8月7日播種)。
  • 7月24日~8月1日に播種したFOEAS区の子実収量は255~385 kg/10a(平均320kg/10a)となり、7月上旬播種に比較して30%程度減収するもののFOEASを施工していない7月上旬播種の約90%を確保できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 本成果は、多雨のため梅雨期に播種できなかった場合や作付面積の拡大により、梅雨明け後に播種する場合の参考となる。
  • 本研究成果は、水田転換畑(岡山県小田郡矢掛町、灰色低地土、標高約20m、面積13.9a)において不耕起播種狭畦密植栽培(2006~2008年:条間30cm、テープシーダを使用)を行って得られたものである。

具体的データ

表1 FOEAS区と慣行区における出芽率

図1 2008 年のアメダス(矢掛)による降水量(上)と土壌 の体積含水率の推移(下)

表2 播種時期と収量の関係

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証に基づく輪作体系の確立
  • 中課題整理番号:211k.7
  • 予算区分: 基盤、重点領域支援、委託プロ( 担い手)
  • 研究期間:2006 年~2009 年
  • 研究担当者: 竹田博之・佐々木良治