青立ちが少なく豆腐加工に適しただいず新品種候補系統「はつさやか(旧 系統名四国1号)」

要約

だいず「はつさやか」は「サチユタカ」より早生で、6月播では青立ちの発生が少なく、大豆-麦2毛作体系に適する。外観品質は良好で、蛋白質含有率が高く豆腐加工に適するほか、味噌、煮豆、納豆の加工にも適した高品質系統である。

  • キーワード:ダイズ、青立ち、蛋白質含有率、豆腐、高品質
  • 担当:近中四農研・大豆育種研究近中四サブチーム
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

四国地域で主に栽培されている大豆品種は「フクユタカ」であるが、晩生種で収穫期が遅くなり大豆後作の麦播種に支障が出るため、現場からはより早生の品種が強く望まれている。また、近年育成された「サチユタカ」は青立ちが発生するためコンバイン収穫に課題があり、さらに裂皮が多発するなど品質面でも問題を抱えている。一方、小産地の多い同地域において独自ブランドの豆腐用品種や多様な大豆加工品に適し、地産地消に対応できる品種への期待も大きい。
そこで、青立ちの発生が少なく早期の収穫が可能で、豆腐加工適性が高く、さらにその他の大豆加工品にも適した高品質品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「はつさやか(四国1号)」は1995年に九州農業試験場(現、九州沖縄農業研究センター)において、蛋白質含量が高く豆腐加工適性が高い「九州116 号」を母、耐倒伏性で多収の「タチナガハ」を父とした人工交配を行い、2001年にF7系統を近畿中国四国農業研究センターに移管し、以降、同センターにおいて選抜を行い育成した系統である。
  • 成熟期は「サチユタカ」より2~4日、「フクユタカ」より6~13日早く、収量は「サチユタカ」並である(表1)。
  • 6月播では「サチユタカ」と比べて青立ちの発生は少なく、最下着莢節位高はやや高い(表1、図1)。
  • 裂皮の発生は「サチユタカ」および「フクユタカ」より少なく、外観品質が優れる(表1)。
  • 子実の粗蛋白質含有率が「フクユタカ」より高く、豆腐破断応力も高いなど豆腐加工に適しているほか、味噌、煮豆、納豆の加工にも適する(表1、表2)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地は近畿、中国、四国地域であり、大豆-麦2毛作地帯では6月播により余裕を持った作付体系が可能になる。
  • 「フクユタカ」後作の麦播種が困難な地域で「はつさやか」を導入する動きがあり、普及に向けて品種登録申請を行う。
  • ダイズモザイクウイルスA2系統およびダイズシストセンチュウに対する抵抗性がないので過度の連作やこれらの病害虫が蔓延する地域での作付を避ける。
  • 7月播では青立ちの発生および最下着莢節位高は「サチユタカ」と同程度である。
  • やや倒伏しやすいので培土を励行する。

 具体的データ

表1 育成地および現地における試験成績

表2 主要特性

図1 成熟期における青立ちの様子(6月播) (2010 年11 月4 日撮影、育成地)

その他

  • 研究課題名:省力・機械化適性、加工適性、病害虫抵抗性を有する食品用大豆品種の育成と品質安定化技術の開発
  • 中課題整理番号:211b
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2001~2010 年度
  • 研究担当者:岡部昭典、高田吉丈、猿田正恭、川瀬眞市朗、菊池彰夫、小野貞芳、異儀田和典、酒井真次、松永亮一、羽鹿牧太、高橋将一、小松邦彦