傾斜地のハウス設置に向けた簡易区画整備のための設計支援システム

要約

棚田へハウスを設置する際に必要となる区画整備の設計に関し、現況区画のデジタルオルソ画像と高さデータがあれば専門的な知識や技術がなくとも、開発した設計支援システムを用いることで整備区画の平面計画や法先位置などの確認が容易にできる。

  • キーワード:傾斜地、ハウス、区画整備、設計支援システム、デジタルオルソ画像
  • 担当:近中四農研・中山間傾斜地域施設園芸研究チーム
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・農業環境工学
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

狭小な棚田へハウスを導入するには、簡易な区画整備が必要である。整備をするに当たり、農家と土工用機械(バックホーなど)オペレータが現地の打ち合わせだけで施工に入ると、でき上がり区画が農家イメージと異なるなどの問題が生じる。そこで農家自身が設計できる、あるいは、第三セクター等が設計する場合でも設計担当者と農家がパソコンの画面を通じ共同検討できる技術は有用である。このため現況区画データの取得や区画からの法面発生などに関し専門的技術がなくとも地形データを簡易に入手する方法や整備区画の平面計画、法面位置などがパソコンにて容易に検討できる技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 区画設計に当たっては、まず整備する現況区画の田面の高さデータ(z)と平面位置データ(x、y)取得のためのデジタルオルソ画像(縮尺1/1,000)を準備する。その後の作業は全て開発した設計支援システムにより行う(図1)。
  • 高さデータ(z:1区画につき1データ)は、区画ごとの畦畔高さ(区画間の田面差)を測定し、最も低い位置にある区画の田面高さを0mとして畦畔高さを積み上げ各区画の高さとする。畦畔高さは、畦畔が低い場合はメジャーにより測定する。畦畔が高い場合は、畦畔始終点にポール、下段区画にデジタルカメラを畦畔に対し直角かつ一直線に設置し、H1、H2、Cを測定する。また、カメラ画像のh1、h2、nの長さを画像ソフト等で測定する(図2)。畦畔高さN=(n・H1・H2+h1・C・H2-h2・C・H1)/(h1・H2)より算定する。
  • 現況区画の平面位置データ(x、y)は、設計支援システムにデジタルオルソ画像を取り込み、画像に写った区画境界の屈曲点をマウスでトレースして取得する(図3青点)。トレース結果は現況区画図として保存される。高さデータ(z)は区画1枚ごとの値を画面の指示に従い入力する。
  • 計画区画の平面形状は、作成した現況区画図に対し描画する。計画区画の高さは現況区画と計画区画が重複する領域の境界をマウスでトレースすることで自動計算される(図3斜線部)。
  • 法面勾配は自由に設定が可能である。法先が平面図に表示されるので所有農地内に収まっていることを簡単に確認することができる(図3)。収まらなかった場合は、法先の不具合部分に当たる計画区画の平面形状を修正することで容易に対応が可能である。法面処理と同時に切盛計算結果が表示される。切土量と盛土量の違いが大きい場合は、訂正ボタンをクリックすると収束に向けて自動的に計画区画の高さが修正され、再び法先と切盛計算結果が表示される(図4)。

成果の活用面・留意点

  • デジタルオルソ画像とは、航空写真を地図と同様に正射投影した画像で、中山間地域等直接支払制度の導入時に自治体等で整備されている。自治体の所有する専用ソフトで表示後、プリントスクリーンで画像ソフトにコピーし本システムで利用する。
  • デジタルオルソ画像から得られる区画面積は,真値に対し区画面積100m2未満で±15%、100m2以上で±5%である。
  • 発生させることのできる法勾配は一様勾配だけである。また、計画区画は2区画までの設計が可能である。
  • 支援システムは表計算ソフト(エクセル)に付帯するVBAを用いて作成しておりシステムの利用に当たっては当該ソフトが必要である。マニュアルは提供可能である。

具体的データ

図1 設計方法の流れ

図2 畦畔高さの測定方法と測定結果

図3 現況、計画区画及び法の平面図

図4 切盛結果の表示

その他

  • 研究課題名:中山間・傾斜地の立地条件を活用した施設園芸生産のための技術開発
  • 中課題整理番号:213c
  • 予算区分:基盤、交付金プロ(中山間20t採りトマト)
  • 研究期間:2006 ~ 2010 年度
  • 研究担当者:細川雅敏、内田晴夫
  • 発表論文等:細川ら、(2010)近畿中国四国農業研究、16:3-7