外観形質が良好で収量性の高いヤーコンの新品種候補系統「アンデスの乙女(旧系統名 SY237)」

要約

ヤーコン「アンデスの乙女」は株当たりの塊根数が多く、単根重も大きいため、収量性が極めて高い。また、従来品種と比べて裂根が生じにくい。塊根の皮色は従来品種にない濃い赤紫色で、表面は非常に滑らかで外観に優れる。

  • キーワード:ヤーコン、品種、多収、新規皮色、多様化
  • 担当:近中四農研・レタスビッグベイン研究チーム、中山間耕畜連携・水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・野菜、野菜茶業・野菜育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

  ヤーコンが日本に導入されて25年が経ったが、農家が栽培するに当たり選択できる品種の幅が狭い。原産地の気候と大きく異なる我が国での栽培にはより適した品種の育成が求められている。また、知名度もあがってきたが、ヤーコンのさらなる消費拡大には消費者にアピールする新たな外観的特徴も必要である。そこで、ヤーコン栽培の普及に資するため、収量性が高く、色彩等の外観形質に新規性をもつ品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「アンデスの乙女(SY237)」は、「97C5-56」(「SY107」(1992年、国際バレイショセンターから導入)×「サラダオトメ」により得た選抜系統)を雌親とし、「SY11」を花粉親として交配後、個体選抜によって育成した系統である。
  • 「サラダオトメ」と比較して、草勢はやや強く、茎長が長く、茎数も多く、地上部重が極めて大きい。葉色は濃緑色で、茎葉のアントシアンによる着色も強い(表1、図1)。
  • 「サラダオトメ」と比較して、株当たりの塊根数が多く、個々の塊根も大きいため収量性が極めて高い(表2)。また、裂根が生じにくく(表2)、秀品率も高い。
  • 肉色は淡橙黄色で糖度、食味は「サラダオトメ」と同程度である(表2)。
  • 塊根は滑らかな紡錘形で揃いも良く、外観品質が良好である。また、皮色はこれまでの品種にはないサツマイモに近い濃い赤紫色である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 従来のヤーコン品種と同様、高温・乾燥に弱いので夏季冷涼な北海道、東北地方および西南暖地の高標高地での栽培に適する。また、作型としては春植え秋冬どり栽培に適する(野菜茶業研究所研究資料第5号(2010年3月)参照)。
  • 栽培密度は、畝幅110cm、株間50cm(a当たり182株)程度が適当である。施肥量は三要素とも1.5kg/a(成分量)程度が適切であり、栽培期間が長いので緩効性肥料が望ましい。
  • 既存品種と同様に病害虫の発生はほとんどなく、特段の防除は必要としない。
  • 地上部の生育が旺盛なことから収穫期に倒伏する場合もあるが、塊根収量への影響はない。
  • サラダ等の青果用、ジュース、漬物等の加工用としての塊根利用のほか、地上部の生育が旺盛なことから葉をヤーコン茶として利用するなどの用途拡大も期待できる。

具体的データ

(石川浩一) [その他] 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成 中課題整理番号:211j.2 予算区分:基盤 研究期間:2006 ~ 2010 年度 研究担当者:藤野雅丈、石川浩一、杉浦誠 図2 「SY237」と「サラダオトメ」の

表2 「SY237」の収量特性と塊根特性(愛媛県久万町:2006-2009年度の平均)

図1 収穫期の「S Y 2 3 7」

図2 「SY237」と「サラダオトメ」の外観形質の 比較。左:「SY237」、右:「サラダオトメ」

その他

  • 研究課題名:病虫害抵抗性、省力・機械化適性、良食味等を有する野菜品種の育成
  • 中課題整理番号:211j.2
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006 ~ 2010 年度
  • 研究担当者:藤野雅丈、石川浩一、杉浦誠