高温登熟下における3次籾の粒重増加程度と整粒および乳白粒割合との関係

要約

登熟気温が高いほど登熟中期における3次籾(2次枝梗の先端から2番目以下に着生する穎花)の平均乾物重(粒重)は高まる。高温登熟性が劣る品種では、3次籾の粒重増加にともなって乳白粒が増え、整粒割合が低下する。

  • キーワード:イネ、高温、整粒、乳白粒、高温登熟障害
  • 担当:近中四農研・稲収量性研究近中四サブチーム
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

近年、登熟期の高温による玄米外観品質の低下が大きな問題となっている。高温登熟性の改良は水稲育種における重要な課題の一つであり、高温登熟性検定基準品種の選定が進められている。しかし、高温登熟性に明確な品種間差があることは古くから指摘されているが、それに関与する形質などについては不明な点が多い。そこで、1~3次籾の粒数や粒重増加に焦点をあて高温登熟性との関係を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 品種、栽培年次、作期の異なるのべ137品種を調査した結果が表1である。整粒の割合は登熟気温と負の相関関係があり登熟気温が高まるほど低下するが、この品質低下には乳白粒や基部未熟粒、背・腹白粒の増加が関連している。
  • 乳白粒の割合は、基部未熟粒や背・腹白粒の発生割合と正の相関関係を示すが、登熟気温との相関は低い(表1)。高温登熟障害粒の発生割合が高まると言われている登熟気温26°C以上では、乳白粒の割合は、1穂あたりの3次籾数が多い品種、登熟中期(出穂後の有効積算気温350°C、下限温度7°C)における3次籾の平均穎花乾物重(以下、粒重)が小さい品種、この粒重の3次籾/2次籾比が小さい品種ほど高まる(表1)。
  • 本研究における整粒割合や既往の知見を参考にして選択した高温登熟性に優れる品種と高温登熟性が劣る品種(図2注)の登熟中期における3次籾の粒重は、登熟気温が高いほど高まるが、両者を比較すると高温登熟性に優れる品種の方が大きい(図1)。
  • 高温登熟性が劣る品種の整粒の割合は、登熟中期における3次籾の粒重が大きいほど低下する(図2左図)。
  • 高温登熟性に優れる品種は,登熟中期における3次籾の粒重に関わらず乳白粒の発生割合は低いが、高温登熟性が劣る品種は登熟中期の3次籾の粒重増加にともなって乳白粒の割合が高まり、両者の傾向は全く異なる(図2右図)

成果の活用面・留意点

  • 高温登熟障害米の発生メカニズムの解明や品種育成の基礎的知見として活用する。
  • 本成果は、近中四農研本館圃場で高温登熟性や育成時期の異なる31品種を2カ年、3作期栽培(年次、作期により供試品種は異なる)して調査したものである。
  • 1次籾:穂軸に着生する穎花(1次枝梗の先端穎花)。2次籾:1次枝梗に着生する穎花(1次枝梗の先端から2番目以下に着生する穎花と2次枝梗の先端穎花).3次籾:2次枝梗の先端から2番目以下に着生する穎花。

具体的データ

表1 整粒および乳白粒の割合と穂相および登熟中期における粒重との相関関係

図1 高温登熟性が異なる品種・系統にお ける登熟中期の2 次籾と3 次籾の穎花乾 物重(粒重)

図2 登熟中期における3 次籾の粒重と整粒割合(左図)および 乳白粒の割合(右図)との関係

その他

  • 研究課題名:イネゲノム解析に基づく収量形成生理の解明と育種素材の開発
  • 中課題整理番号:221c
  • 予算区分:基盤、委託プロ(温暖化)
  • 研究期間:2006~2010 年
  • 研究担当者:佐々木良治、長田健二、大平陽一