ダイズのラッカセイわい化ウイルス抵抗性の品種間差異と遺伝様式

要約

ダイズの114品種のうち「おおすず」、「リュウホウ」、「エンレイ」、「サチユタカ」等51品種はラッカセイわい化ウイルス(PSV)に罹病性である。また、ダイズのPSV抵抗性は単因子優性に遺伝し、少なくとも2つ遺伝子座が存在する。

  • キーワード:ダイズ、ラッカセイわい化ウイルス、抵抗性、品種間差異、遺伝様式
  • 担当:近中四農研・大豆育種研究近中四サブチーム
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・作物生産、作物
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

ラッカセイわい化ウイルス(PSV)は、ダイズに減収や褐斑粒による品質低下を引き起こす。これまでにも北海道、東北、北陸、近畿、中国地方と国内各地で発生が報告され、抵抗性品種の育成が望まれている。これまでの研究により、PSVには分離株PSV-K及びTに代表される宿主の反応、血清学的性質、理化学的性質の異なる2つのグループの存在が明らかにされている。一方、ダイズのPSV抵抗性は、一部の品種の抵抗性の有無が調査されているものの、近年の育成品種の抵抗性の有無並びに遺伝様式に関しては不明である。そこで、主要品種の抵抗性の有無及び抵抗性の遺伝様式を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ダイズの主要品種のうち、「ユキホマレ」、「タチナガハ」、「フクユタカ」等63品種はPSV抵抗性、「おおすず」、「リュウホウ」、「エンレイ」、「サチユタカ」等51品種はPSV罹病性である(表1)。
  • 抵抗性品種と罹病性品種の交雑後代のPSV接種に対する表現型は、F1は全て抵抗性、F2は抵抗性:罹病性が3:1に分離し(表2)、F3系統は、抵抗性:分離(抵抗性:罹病性が3:1の割合で存在):罹病性が1:2:1に分離することから(表3)、ダイズのPSV抵抗性は単因子優性に遺伝すると推定される。
  • 3組の抵抗性品種間の交雑後代F2を用いた対立性検定の結果、「ヒュウガ」×「Harosoy」、「ヒュウガ」×「つるの卵1号」では全ての個体が抵抗性、「ヒュウガ」×「Peking」では抵抗性:罹病性が15:1に分離することから(表4)、ダイズのPSV抵抗性は「ヒュウガ」、「Harosoy」、「つるの卵1号」の抵抗性遺伝子の座位と「Peking」の抵抗性遺伝子の座位の少なくとも2座が存在すると推定される。
  • 性質の異なるPSV分離株への各ダイズ品種及び抵抗性品種と罹病性品種の交雑後代F3系統の反応は、PSV-Kに対してはモザイク症状、PSV-Tに対しては葉巻を伴うモザイク症状と病徴に違いはあるものの、全ての品種・系統で抵抗性の有無は一致する(図表省略)。この結果より、この2分離株に対しての抵抗性は同一座に存在すると推定される。

成果の活用面・留意点

  • ダイズのラッカセイわい化ウイルス抵抗性品種育成の資料とする。
  • 接種病原には、ダイズに軽いモザイク症状を引き起こすグループの代表として京都府由来の分離株PSV-Kを、葉巻を伴うモザイク症状を引き起こすグループの代表として鳥取県由来の分離株PSV-Tを用いた。
  • 抵抗性の評価は、ウイルス罹病葉の摩砕液を汁液接種した後、1~3週間程度の観察で行った。

 具体的データ

表1 代表的なダイズ品種のPSV抵抗性

表2 抵抗性品種×罹病性品種の交雑後代F1およびF2世代におけるPSV抵抗性の表現型の分離

表3 抵抗性品種×罹病性品種の交雑後代F3系統におけるPSV抵抗性の表現型の分離

表4 抵抗性品種x抵抗性品種の交雑後代F2におけるPSV抵抗性の表現型の分離

その他

  • 研究課題名:省力・機械化適性、加工適性、病害虫抵抗性を有する食品用大豆品種の育成と品質安定化技術の開発
  • 中課題整理番号:211b
  • 予算区分:基盤、委託プロ(加工)
  • 研究期間:2006~2010 年度
  • 研究担当者:猿田正恭、高田吉丈、菊池彰夫、川瀬眞市朗、岡部昭典