キウイ幼果抽出物は脂肪細胞分化と脂肪細胞へのグルコース取り込みを促進する
要約
摘果したキウイ幼果メタノール抽出物の合成吸着剤Diaion HP20カラムクロマトグラフィー100%メタノール画分は脂肪細胞分化を促進するとともに、アディポネクチンおよびMCP-1分泌量を改善し、脂肪細胞へのグルコースの取り込みも促進する。
- キーワード:脂肪細胞分化、グルコース取り込み、キウイ、抽出物、糖尿病
- 担当:近中四農研・特命チーム員(健康機能性研究チーム)
- 代表連絡先:電話0877-62-0800
- 区分:近畿中国四国農業・作物生産
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
II型糖尿病は血中の糖(グルコース)の値が高く、インスリンの効きが悪くなった状態(インスリン抵抗性)であり、メタボリックシンドロームの進行と密接に関わっていることが知られている。脂肪組織には大小様々なサイズの脂肪細胞が存在し、大型脂肪細胞はインスリン抵抗性である上に、インスリンの効きを悪くする物質を分泌する。反対に、小型脂肪細胞はインスリンの効きが良く、インスリン抵抗性を改善する物質を多く分泌する。つまり、糖尿病を予防・改善するには小型脂肪細胞への分化を促進することが重要であると考えられる。キウイ果実は摘果することで品質を良くする必要があり、摘果されたキウイ幼果は廃棄されている。キウイ幼果に機能性を見い出すことができれば廃棄物の利用拡大につながることから、脂肪細胞分化を指標としてキウイ幼果抽出物の抗糖尿病作用について検討する。
成果の内容・特徴
- 摘果したキウイ‘香緑’幼果の100%メタノール画分(Kiwifruit methanol fraction: 以下「KMF」)は、幼果を凍結乾燥後メタノールで抽出し、ヘキサンと75%メタノールの分配により油分を除去後、合成吸着剤を用いたカラムクロマトグラフィーにおいて各種溶媒で溶出することで得られる(図1)。
- KMFを前駆脂肪細胞3T3-L1に対して常法で用いられる分化誘導剤とともに添加すると、脂肪細胞分化の指標となる細胞内トリグリセライドの蓄積が促進される(図2)。他の画分では同様の強い活性は認められない。
- KMF処理細胞ではインスリン抵抗性改善作用を有するアディポネクチンの遺伝子発現が増加し、インスリン抵抗性進行作用を有するMCP-1の遺伝子発現が減少する(図3A)。両遺伝子の発現変動は培地中に放出されるタンパク量にも反映される(図3B)。
- KMFは分化した脂肪細胞のグルコース取り込みを促進する(図4)。この効果はインスリンの存在下、あるいは非存在下でも観察される。
成果の活用面・留意点
- 本結果は培養細胞での結果であり、実際に動物に対しても効果があるかどうかはさらに詳しく調べなければならない。
具体的データ




その他
- 研究課題名:かんきつ・りんご等果実の機能性成分の機能解明と高含有育種素材の開発
- 中課題整理番号:312c
- 予算区分:基盤
- 研究期間:2006~2010 年度
- 研究担当者:齋藤武、阿部大吾、久保康隆( 岡山大学) 、中村宜督( 岡山大学)
- 発表論文等:Abe D. et al. (2010) BioFactors 36(1):52-59