チョウジの各種植物病原菌に対する抗菌活性

要約

チョウジ(Syzygium aromaticum)の50%エタノール抽出液は供試したイネ・野菜類の10種全ての植物病原糸状菌に高い抗菌活性を示す。また、植物病原細菌ではイネ褐条病菌に抗菌活性を示す。抗菌活性はエタノール可溶性画分に存在する。

  • キーワード:チョウジ、抗菌活性、植物病原菌
  • 担当:近中四農研・特命チーム員(生物的病害制御研究チーム)
  • 代表連絡先:電話084-923-4100
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)・共通基盤・病害虫(病害)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

化学合成農薬に依存しない病害防除法の一つとして、各種生薬、ハーブ等の天然物に含まれる抗菌活性物質を利用した病害防除法の開発が望まれる。そこで、生薬、ハーブ等のエタノール抽出液の植物病原菌に対する抗菌活性を検定し、抗菌性の高い生薬等を選抜して新たな病害防除法の開発に資する。

成果の内容・特徴

  • コウボク、ダイオウ、ケイヒ、シソ、オウギ、キョウニン、ボタンピ、オウゴン、オウバク、シャクヤク、ツクシ、インチンコウ、ガイヨウ、オウレン、チョウジ、ショウウイキョウ、センキュウ、クリーピングローズマリー、トウニンの19種類の生薬、ハーブ、野草の各50%エタノール抽出液の中ではオウゴン、インチンコウ、チョウジの各抽出液がトマト褐色輪紋病菌、キュウリ炭疽病菌、ジャガイモ疫病菌の3種類の病原菌に対して無処理と比較して抗菌活性が高い(図1)。
  • 表1に示す7種の植物病原糸状菌に対するオウゴン、インチンコウ、チョウジの各50%エタノール抽出液の抗菌活性を比較すると、チョウジが他の2生薬に優る。チョウジ抽出液は7種の植物病原糸状菌の内6種の菌の生育を完全に阻止し、抗菌スペクトラムが広い。
  • チョウジの蒸留水抽出液の3種病原菌に対する抗菌活性は50%エタノール抽出液より低く、99%エタノール抽出液は最も抗菌活性が高い。したがって、抗菌活性はエタノール可溶性画分に含まれる(表2)。また試薬チョウジ油も表2に示した病原菌に対し同様の強い抗菌活性を認める(データ略)。
  • チョウジの50%エタノール抽出液を1%添加したPPGA培地ではイネ褐条病菌のコロニー形成は阻止されるが、イネもみ枯細菌病菌,イネ内穎褐変病菌には抗菌性を認めない。チョウジの50%エタノール抽出液および試薬チョウジ油の燻蒸法による検定では抗菌性を認めない(表3)。

成果の活用面・留意点

  • チョウジ抽出液の利用法として、浸漬処理による種子消毒・苗消毒、ベントナイトなどの担体と混合したペースト状殺菌剤等が考えられるが、農薬あるいは特定防除資材の指定を受けておらず、使用方法の確立を図る必要がある。
  • 海外ではチョウジ葉(落葉含む)の土壌混和による病害防除も試みられている。
  • チョウジは別名クローブとも言い、香辛料としてスープ、肉料理等に用いられる他、胃腸薬、口腔内殺菌剤としても広く使用されている。

具体的データ

図1 各種生薬等の50%エタノール抽出液のトマト褐色輪紋病菌、キュウリ炭疽病菌およびジャガイモ疫病菌に対する抗菌活性

表1  オウゴン、インチンコウ、チョウジの各50%エタノール抽出液の各種植物病原菌に対する抗菌活性

表2 チョウジ抽出液の溶媒の違いが植物病原菌の抗菌活性に及ぼす影響

表3  チョウジの50%エタノール抽出液および試薬チョウジ油の水稲病原細菌に対する抗菌活性

その他

  • 研究課題名:誘導抵抗性等を活用した生物的病害抑制技術の開発
  • 中課題整理番号:214d
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2010 年度
  • 研究担当者:宮川久義、大野裕和(丸善製薬株式会社)