現地での迅速判定可能なRIPA法によるトマト黄化葉巻病の診断法

要約

トマト黄化葉巻病の診断に血清学的診断法の1種であるRIPA法を応用する。RIPA法では発症前診断が可能であり、簡便な操作により約10分で結果が判明するため現場圃場においての迅速な診断に適している。

  • キーワード:トマト黄化葉巻病、RIPA、TYLCV
  • 担当:近中四農研・レタスビッグベイン病研究チーム(兼・野菜IPM研究チーム)
  • 代表連絡先:電話0877-62-0800
  • 区分:近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

タバココナジラミが媒介するウイルス病であるトマト黄化葉巻病は全国的に広がり猛威をふるっている。本病防除には媒介虫の侵入阻止等や、二次伝染源となる温室内感染株の早期除去が求められる。現在、本病の診断には、病原TYLCV遺伝子の検出によるPCR法等の遺伝子診断法が主に用いられている。しかし、高額な機材および試薬が必要であり、またその操作も煩雑である。一方、血清学的診断法の1種である迅速免疫ろ紙検定(RIPA)法はろ紙中での抗原抗体反応により診断する方法で、なんら機材を必要とせず簡便に診断が行える。そこで温室内の感染株を早期かつ簡便に診断し、速やかな抜き取りを可能にするRIPA法を本病の診断に応用する。あわせて本病の他にトマトで問題となっているCMVによるモザイク病との同時診断を可能にする。

成果の内容・特徴

  • 作製したTYLCVに対する抗血清を、Tsuda et al. (1992, 1993)の方法に準じてRIPA法に用いると、TYLCV感染トマト葉磨砕液での検出希釈限界は3200倍である(表1)。また、イスラエル、マイルド両系統とも差異なく検出可能である。
  • RIPA法では、発症2~6日前にトマト新葉でTYLCV検出が可能である(表2)。
  • 診断は簡便なうえ、試料調製から判定まで約10分で終了できる(図1、図2左)。一方、PCR法では約5時間、ELISA法では2日間を要する。
  • 1枚のろ紙に抗TYLCV抗体、抗CMV抗体をそれぞれ感作したラテックスを処理することで両ウイルスの同時検出が可能である(図2右)。

成果の活用面・留意点

  • RIPA法は現場圃場において簡便かつ短時間で診断が行えるので、生産者による感染株の判断が可能である。
  • 検定試料には、乳鉢を用いた磨砕液の他に、簡便にビニール袋に検体を入れてハンマー等で圧搾した汁液も用いることができる。
  • RIPA法に用いる感作ラテックス液は提供可能である。

具体的データ

表1 各検定法によるTYLCVの検出限界

表2 RIPA法によるTYLCV接種トマトからの検出時期

図1 RIPA法の検定手順

図2 RIPAによる検定例 左:TYLCV単独検定、右:TYLCV・ CMV多重検定。 赤色バンドはTYLCV陽性、水色バンド はCMV陽性を示す。

その他

  • 研究課題名:野菜栽培における土壌微生物、天敵の機能解明と難防除病害虫抑制技術の開発
  • 中課題整理番号:214k
  • 予算区分:実用技術、基盤
  • 研究期間:2006?2010 年度
  • 研究担当者:大崎秀樹、野見山孝司、石川浩一
  • 発表論文等:Osaki H. et al. (2011)近中四農研報、10:13-27