低アミロースで食味に優れる温暖地向き巨大胚水稲品種「はいごころ」

要約

水稲「はいごころ」は温暖地西部において中晩生熟期の低アミロース巨大胚系統である。γ-アミノ酪酸(GABA)の含量が多く、温暖地向きの巨大胚品種「はいいぶき」よりも収量性、苗立ち性および食味に優れる。米粉パンとしての利用も可能である。

キーワード:イネ、巨大胚、低アミロース、中晩生、GABA、米粉パン
担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
代表連絡先:電話 084-923-4100
研究所名:近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域
分類:研究成果情報

背景・ねらい

温暖地向きの巨大胚品種「はいいぶき」はγ-アミノ酪酸(GABA)の含量が多く、発芽玄米等に利用されてきたが、収量性および苗立ち性が不十分である。このため、収量性および苗立ち性を改良するとともに、低アミロース性を導入することにより食味を改善した巨大胚品種を育成する。

成果の内容・特徴

水稲「はいごころ」は、低アミロース品種の「ミルキープリンセス」を母、巨大胚系統の「巨5-7」(「はいいぶき」の姉妹系統)を父とした後代より育成した低アミロースの巨大胚系統である(表1、写真1)。
育成地における普通期栽培での出穂期は「はいいぶき」より2日遅く、温暖地西部の基幹品種「ヒノヒカリ」と同じ"中生の晩"に属する粳種である(表1)。
耐倒伏性は「はいいぶき」より劣る"中"で、収量は「はいいぶき」より優る(表1)。
育苗における苗立ち性は、「ヒノヒカリ」よりは劣るものの、「はいいぶき」より優る(表1)。
いもち病真性抵抗性遺伝子Piaを持つと推定され、圃場抵抗性は葉いもちが"やや弱"、穂いもちが"やや弱"である。白葉枯病抵抗性は"中"で、縞葉枯病に抵抗性で、穂発芽性は"中"である(表1)。
玄米重に対する胚芽重の割合および水に浸漬後のGABA生成量は「はいいぶき」と同等に、「ヒノヒカリ」の2～3倍である。玄米の外観品質は「はいいぶき」と同等である。アミロース含有率は7.9%程度であり、胚芽米の米飯食味の総合値は、「はいいぶき」より優れる(表1)。
普及見込み地域での食味試験においても、4分精米のご飯の食味は「はいいぶき」より優る(表2)。また、4分精米し、普通のウルチ米と1:1に混合した米粉で作成したパンの食味も「はいいぶき」で同様に作ったパンより食味が優る(表2)。