レタスビッグベイン病抵抗性の年末年始どりレタス新品種「ウインターパワー」

要約

レタスの新品種「ウインターパワー」は既存品種「ロジック」と比べてレタスビッグベイン病抵抗性が強く、収量、品質ともに優れる。10月上旬から中旬に定植する年末年始どりに適している。

  • キーワード:レタス、品種、レタスビッグベイン病抵抗性、年末年始どり
  • 担当:環境保全型農業システム・環境保全型野菜生産
  • 代表連絡先:電話 0877-62-0800
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・作物機能開発研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

水田複合農業を基幹とする近畿中国四国地域では水田裏作での野菜生産が重要な柱となっている。冬春レタスはその主要品目のひとつであるが、レタスビッグベイン病の発生が問題となっている。その対策として農研機構では本病が多発する厳寒期の栽培に適した抵抗性品種「フユヒカリ」を育成した。しかし、近年の発生時期は厳寒期だけでなく、12月中旬から1月にまでに拡大してきており、この時期の収穫に適した抵抗性品種が少ない。そこで、レタスビッグベイン病抵抗性を有し、実用形質にも優れる年末年始どりを対象としたレタス品種を交配育種により育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ウインターパワー」は、2002年に米国農務省(USDA)で育成された抵抗性品種「Thompson」と香川県での主要品種である「シスコ」を交配し、個体選抜によって育成した系統である。
  • レタスビッグベイン病の病原ウイルスであるミラフィオリレタスウイルスに感染はするが、既存抵抗性品種「ロジック」と比べて発病遅延効果が高く、また発病度も低くい。(表1)。
  • 10月上旬から中旬にかけて定植、12月下旬~1月中旬に収穫する年末年始どりに適し、この時期の栽培では高品質なレタスが収穫できる(表2)。
  • 「ロジック」と比較して、地上部重および球重は同等以上で、形状は同等ないしやや腰高、しまり(緊度)は同等ないしややゆるい(表2、図1、2)。
  • 大玉率、秀品率ともに「ロジック」と同等ないしやや優れる。冬どり用の代表品種である「シスコ」に比べて結球重量が重く、大玉率も高いため、収量性が高くなる。その傾向は汚染圃場で顕著である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 強度汚染圃場でも抵抗性が十分に発揮され、高品質レタス栽培が可能である。
  • 温暖地における年末年始どりに適し、厳寒どりでは球が小ぶりになる。厳寒どりには「フユヒカリ」が適する。
  • トンネル被覆をした場合にはトンネル内温度の上昇により球形が乱れる場合がある。

具体的データ

表1 レタスビッグベイン病抵抗性の品種間での比較
表2 生産力検定試験の結果
図1 収穫直前の「ウインターパワー」図2 「ウインターパワー」の形状

(石川浩一)

その他

  • 中課題名:土壌病害虫診断と耕種的防除技術開発による野菜の環境保全型生産システムの構築
  • 中課題番号:153a2
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2002~2011年度
  • 研究担当者:石川浩一、藤野雅丈、小林尚司(兵庫農技総セ)、西口真嗣(兵庫農技総セ)、西野勝(兵庫農技総セ)、西山芳邦(香川農試)、楠幹生(香川農試)、生咲巖(香川農試)、藤村耕一(香川農試)、香西修志(香川農試)
  • 発表論文等:石川ら「ウインターパワー」品種登録出願2011年12月21日(第26590号)