ユリ切り花の開花日予測・処理導出ソフトウェア

要約

ユリの蕾期収穫切り花について、品種選択と蕾長入力によって、各温度条件下での開花日を予測するソフトウェアである。特定日の開花目標本数、一緒に管理する集団の数、部屋の温度を入力すれば、室内で目標に沿って開花させるために必要な処理も導出できる。

  • キーワード:開花日予測、ユリ、切り花、開花調節、Excel
  • 担当:経営管理システム・ビジネスモデル
  • 代表連絡先:電話 084-923-4100
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・営農・環境研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

直売所など小売店での切り花需要は、休日や祝祭日など特定日へ集中する傾向がある。ところで、ユリは、第一花の開花時の蕾長が品種によって概ね決まっており、蕾の日成長量と気温の間には品種毎に直線的な関係がある。この特性を利用して、各温度条件下における開花日を予測するソフトウェアを開発する。ユリを蕾で収穫して、家庭用エアコンによって温度管理した部屋に数日置くことで、特定日に開花させる技術も開発されている(2012年度成果情報「小ギクとユリのつぼみ期収穫切り花の特定日開花調節技術」)ので、この技術を利用して特定日に目標本数を開花させるための処理を導出する機能も加える。

成果の内容・特徴

  • 本ソフトウェアはExcelファイル(マクロ有効ブック)である(図)。蕾収穫後の各温度条件下における第一花の開花日を予測できる(開花日予測)。加えて、特定日に目標本数を開花させるための処理(各温度の部屋に置く日数)も導出できる(処理導出)。
  • LA系4品種、オリエンタル系2品種のデータを収録している(初期登録品種:図右上段)。これら以外の品種でも、本ソフトウェアの説明にしたがって予備試験して結果を入力すれば、開花日予測や処理導出ができる。
  • 同一圃場・品種・定植日の80本以内を同時に計算できる。開花日予測に必要な第一花の蕾長入力には、1)一本ずつ全蕾長を入力、2)平均値とバラツキ(標準偏差)を入力、の2種類の方法がある。加えて、特定日の開花目標本数とグループ(同じバケットに入れるなど一緒に管理する集団)数、部屋の温度を入力すれば、処理導出もできる。
  • 開花日予測の結果は、蕾収穫後の各温度条件下における各日の開花予測本数の表(図右中段)と、折れ線グラフで表示できる。処理導出の結果は、各グループの処理、特定日の開花予定本数などを表(図右下段)として表示できる。なお、処理導出では、すべてを目標通りに開花できないケースでも、最も目標に近くなるような処理を導出できる。

成果の活用面・留意点

  • 本ソフトウェアは主に、ユリを生産する直売所出荷者が、特定日開花技術と合わせて利用する場合を想定している。この場合、開花日予測では、1)開花できる日の範囲、2)開花ピークを調節する場合の部屋の温度が分かる。処理導出は、開花ピークの調節だけでなく日々の開花本数の詳細な調節に利用できる(温度が異なる2つの部屋が必要)。なお、特定日の開花目標本数の設定には、直売所スタッフ向けの2012年度成果情報「直売所における切り花需要量の予測ソフトウェア」から得られる結果が参考になる。
  • 直売所出荷者以外の利用や特定日開花技術を利用しない場合でも、開花日予測はユリ生産者の出荷先や流通業者の仕入れの検討材料にするなどの利用方法が考えられる。
  • 個体差や部屋の温度ムラなどによって開花予定からずれることがあるため、開花予定日直前には蕾の状況を確認し、温度などを微調整することが望ましい。
  • 本ソフトウェアは、Excel2007と2010で動作を確認している。本ソフトウェアと操作マニュアルは、農研機構内のhttp://fmrp.dc.affrc.go.jp/programs/を通じて配付予定である。

具体的データ

 図

その他

  • 中課題名:地域農業を革新する6次産業化ビジネスモデルの構築
  • 中課題番号:114b0
  • 予算区分:交付金、実用技術
  • 研究期間:2010~2012年度
  • 研究担当者:吉田晋一、角川由加(奈良農総セ)、虎太有里(奈良農総セ)、仲照史(奈良農総セ)、山中正仁(兵庫農総セ)、豊原憲子(大阪環農水総研)
  • 発表論文等:
    1)吉田(2013)農業経営通信、254:6-7
    2)吉田(2013)職務作成プログラム登録、機構-M17