レタスビッグべイン病の媒介菌Olpidium virulentusに特異的な抗体の作製法
要約
レタスビッグベイン病の病原ウイルスを媒介するOlpidium virulentusの休眠胞子は、感染レタス根から酵素処理等を通じて高純度かつ大量に精製できる。この休眠胞子を抗原として作製した抗体は、本菌を種特異的に認識できる。
- キーワード:レタスビッグベイン病、媒介菌、Olpidium virulentus、休眠胞子、抗体
- 担当:環境保全型農業システム・環境保全型野菜生産
- 代表連絡先:電話 084-923-4100
- 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
瀬戸内地域の冬春レタス産地で深刻な被害を及ぼしている土壌伝染性ウイルス病害のレタスビッグベイン病は、土壌生息菌Olpidium virulentusが病原のレタスビッグベインミラフィオリウイルスを媒介することにより発症する。しかし、人工培養できない絶対寄生菌である本菌は、宿主内や環境中での動態を把握することは困難である。そこで、血清学的手法により媒介菌を簡易に検出することを目指して、レタス根から媒介菌休眠胞子を精製し、これに対する抗体を作製する。
成果の内容・特徴
- 酵素処理した休眠胞子感染レタス根から、2度の密度勾配遠心分離を通じて、感染能力を有する休眠胞子を高純度かつ大量に精製できる(図1)。
- 精製したO. virulentusの休眠胞子をウサギに接種して作製した抗体とアルカリフォスファターゼ標識二次抗体を用いる直接免疫染色法では、近縁のO. brassicaeとO. bornovanusの休眠胞子には反応せず、O. virulentusとのみ反応し、紫色を呈する(図2)。
- 同抗体を用いる間接エライザでは、コーティングする精製休眠胞子濃度が200個/100 µl以上で検出が可能となる(図3)。
- 同抗体を用いるウェスタンブロットでは、O. virulentusの休眠胞子の30.5 kDaと29.0 kDaのタンパク質に特異的に反応する(図4)。
成果の活用面・留意点
- 感染能力を有する精製休眠胞子を用いて、O. virulentusの宿主への感染動態やウイルス媒介能などの研究ができる。
- 病原ウイルスの検出法に合わせ、媒介菌の休眠胞子を特異的に認識する抗体を用いることにより、レタスビッグベイン病の発病リスクをより的確に評価できる可能性がある。
- 今回確立した休眠胞子の精製法は、O. brassicaeとO. bornovanusにも適用できる。
具体的データ
その他
- 中課題名:土壌病虫害診断と耕種的防除技術開発による野菜の環境保全型生産システムの構築
- 中課題番号:153a2
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2008~2012年度
- 研究担当者:野見山孝司、関口博之、富岡啓介、大崎秀樹、笹谷孝英、 宮川久義、竹原利明、石川浩一
- 発表論文等:Nomiyama K. et al. (2013) J. Gen. Plant Pathol. 79(1):64-68