ハクビシンは狭い隙間から侵入できる
要約
ハクビシン成獣は一辺8cmの正方形、直径9cmの円形、6×12cmの横長の長方形、11×7cmの縦長の長方形の入口から侵入できる
- キーワード:ハクビシン、侵入、鳥獣害、運動能力、野生動物
- 担当:基盤的地域資源管理・鳥獣害管理
- 代表連絡先:電話 0854-82-0144
- 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・畜産草地・鳥獣害研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
ハクビシンは、農作物や果実の食害を引き起こす前線基地として民家や神社仏閣の天井裏に棲みつき、騒音や糞便による悪臭などの生活被害も発生させている。ハクビシンによる家屋への侵入を防除するための基礎的研究として、侵入可能な入口の大きさおよび形状の検討を行い、侵入防止対策を検討する。
成果の内容・特徴
- 本試験は繁殖可能な成熟したハクビシン4頭(雄2頭、雌2頭)を供試して行った。
- 大きさや形の異なるさまざまな入口を各部屋(餌入り)に設置し、ハクビシンが部屋の中に入ると餌が得られる実験を行ったところ、ハクビシンは、丹念にすべての入口を鼻や目で探査を行ってから入口を選択する(図1)。
- ハクビシンが侵入できる最小の隙間の大きさと形状は、正方形では一辺が8cm、円形では直径9cmである(表1)。
- 長方形は、長辺を十分な長さ(20cm)にすると、短辺が6cmで侵入できる(表2)。長辺の長さを変化させると6×12cmの横長の長方形、11×7cmの縦長の長方形を通過できる。
- 供試個体の体の各部位の測定値を照らし合わせると、短辺が6cmの長方形の入口から侵入できた個体と侵入できなかった個体で体重や頭胴長の測定値に差はみられず、最大の個体について記述、短辺が6cmの長方形の入口から侵入できる(表2)。
- 一方、正方形および円形の入口では、ハクビシンの体重や頭胴長だけでなく肩甲幅などの体の各部位の大きさの違いが、侵入できた最小の入り口の大きさを左右している可能性がある(表2)。
成果の活用面・留意点
- 日本の家屋は通気性を高めるために随所に隙間がある構造を有するため、ハクビシンが壁の間の隙間を移動することで、家屋内を自由に移動できる可能性がある。
- ハクビシンの農作物被害が付近で発生している地域や、家屋の天井にシミがある場合、屋根裏に侵入している可能性があるので屋根裏をのぞいて点検する。
- ハクビシンは侵入できる隙間があれば何度も訪問し、侵入できない隙間であっても鼻先を入れて探査する。家屋の通風口などハクビシンが侵入する可能性のある隙間がある場合には、金網などの目が広がらないもので覆い、外壁や屋根の破損などを定期的に点検する。
具体的データ
その他
- 中課題名:野生鳥獣モニタリングシステム及び住民による鳥獣被害防止技術
- 中課題整理番号:420d0
- 予算区分:交付金、委託プロ(外来生物)
- 研究期間:2008~2010年度
- 研究担当者:江口祐輔
- 発表論文等:
1) Kase C. et al.(2010) Animal Behaviour and Management 46:89-96
2) Kase C. et al.(2011) Mammal Study 36:127-133
3) Kase C. et al.(2011) Animal Behaviour and Management 47:121-127