温暖地向けの高アミロース水稲新品種「ふくのこ」

要約

水稲「ふくのこ」は温暖地西部において“やや晩生”に属し、縞葉枯病抵抗性を有する高アミロース米品種である。アミロース含有率が27%程度で、製麺適性が高い。日本型品種の粒形であり、一般的な食用米と同じ方法で調製を行うことができる。

  • キーワード:イネ、高アミロース、米粉麺
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話084-923-5346
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

水田の有効活用と食料の安定供給を確保する観点から、米粉の利用が促進されている。高アミロース米は、一般の良食味米と比較すると、麺離れが良く製麺適性が高いことから、寒冷地南部では「越のかおり」、寒地では「北瑞穂」などが育成され、米粉麺として製品化されている。温暖地西部でも「ホシユタカ」などの品種が育成されているが、脱粒性の問題に加え、粒形が細長いことなどから籾すりや精米が困難であるという欠点があった。そこで、粒形が一般的な日本型品種と同等で、温暖地西部に適した高アミロース米品種を開発する。

成果の内容・特徴

  • 「ふくのこ」は、アミロース含有率が高く、製麺適性に優れる「新潟79号」(後の「こしのめんじまん」)と、多収で縞葉枯病抵抗性を有する「関東229号」の交配後代から育成された品種である(表1)。
  • 標肥栽培では、出穂期は「ヒノヒカリ」より2日、成熟期は4日ほど早く、温暖地西部では“やや晩生”に属する。稈長は「ヒノヒカリ」より8cmほど短く、耐倒伏性は“強”である。収量性は、標肥、多肥栽培とも「ヒノヒカリ」「ホシニシキ」より2割程度多収である。脱粒性は「ヒノヒカリ」と同等の“難”で、「ホシユタカ」より明らかに脱粒しにくい(表1)。
  • 玄米千粒重は「ヒノヒカリ」とほぼ同じ“中”で、玄米品質は「ヒノヒカリ」よりやや劣り、粒形は長円形である(表1)。「ヒノヒカリ」などと粒形が同等のため、選別、精米など従来の日本型品種に対応した調製方法が適用できる(図1)。アミロース含有率は、「ヒノヒカリ」より10ポイント程度高い27%前後で、「ホシニシキ」「ホシユタカ」と同等である(表1)。
  • 「ふくのこ」を米粉と水のみで米粉麺に加工した結果、製麺適性は「こしのめんじまん」と同等に良好であった(表2)。
  • いもち病抵抗性遺伝子PiaPiiを持つと推定され 、葉いもち圃場抵抗性は“やや強”、穂いもち圃場抵抗性は“強”である。縞葉枯病には“抵抗性”、白葉枯病抵抗性は“弱”、穂発芽性は“やや易”である(表1)。

成果の活用面・留意点

  • 出穂特性からみた栽培適地は、「ヒノヒカリ」熟期の品種が栽培可能な関東以西の平坦部である。
  • 米粉麺への加工のほか、カレーライスなどへの利用も期待され、岡山県を中心に50haほどの作付けが計画されている。
  • 穂発芽性が“やや易”であるため、適期刈り取りに努める。
  • 白葉枯病に弱いため、常発地での栽培には注意する。

具体的データ

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(米粉プロ)
  • 研究期間:2006~2015年度
  • 研究担当者:重宗明子、出田収、中込弘二、石井卓朗、春原嘉弘、松下景、飯田修一
  • 発表論文等:品種登録出願公表 第30997号(2016年9月9日)