難裂莢性で耐倒伏性が強く醤油加工に適した大豆新品種「たつまろ」
要約
「たつまろ」は、難裂莢性で耐倒伏性が強く最下着莢位置が高い機械化適性に優れた品種で、成熟期は中生で収量性は高い。ダイズモザイクウイルスに対する褐斑・種子伝染抵抗性を有している。粗タンパク含有率が高く、醤油、豆腐などの加工に適する。
- キーワード:ダイズ、難裂莢性、耐倒伏性、褐斑・種子伝染抵抗性、醤油
- 担当:作物開発・利用・大豆品種開発・利用
- 代表連絡先:電話0877-62-0800
- 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・作物機能開発研究領域
- 分類:研究成果情報
背景・ねらい
醤油は日本を代表する調味料であるが、その原料のほとんどは脱脂加工大豆や輸入大豆である。近年、食に対する安全・安心志向や地産地消への意識の高まりなどから国産大豆を原料とした醤油製品へのニーズはあるものの、醤油醸造に好適な国内品種は少ない。
そこで、機械化適性に優れ、実需者から要望の高い醤油加工に適した比較的小粒で高蛋白の温暖地向け大豆品種を育成する。
成果の内容・特徴
- 「たつまろ」は、2004年に高蛋白で耐倒伏性が強く多収の「サチユタカ」を母に、褐斑・種子伝染抵抗性の「短葉」を父とした人工交配から育成された品種である。
- 近畿中国四国地域における成熟期は"中生"で「サチユタカ」よりやや遅い。子実重は「サチユタカ」と同等以上である(表1)。
- 難裂莢性で、耐倒伏性が強く、最下着莢位置が高いことから機械化適性に優れる(図1、表1)。
- ダイズモザイクウイルス(SMV)の感染に対して、褐斑粒を生じにくく種子伝染も極めて少ない(図2)。また、ラッカセイわい化ウイルスに抵抗性である(表1)。
- 百粒重は「サチユタカ」、「タマホマレ」より軽く、裂皮は「サチユタカ」、「タマホマレ」より少ない。粗タンパク含有率は「サチユタカ」よりやや低いが「タマホマレ」より高い(表1)。
- うまみ成分の素になる圧搾生汁の全窒素が「タマホマレ」よりやや高く、色度は同じランクで「淡口」規格を満たし、官能評価は「タマホマレ」と同等で、醤油醸造に適する(表2)。また、「サチユタカ」と比較した豆腐破断強度などの物性およびおいしさなどの官能評価の結果から豆腐加工に適する(表1)。
成果の活用面・留意点
- 栽培適地は近畿中国四国地域である。
- 兵庫県で「タマホマレ」に置き換えて作付され、醤油用原料として需要が見込まれる。
- 立枯性病害に対する抵抗性がやや弱いので排水対策を徹底する。また、立枯性病害の蔓延圃場での栽培は避ける。
- 「たつまろ」のSMVに対する真性抵抗性は「サチユタカ」と同様にAおよびB系統に抵抗性、A2、C、DおよびE系統には感受性である。また、真性抵抗性とは別にSMVの病原系統に依存しない効果が期待される褐斑・種子伝染抵抗性を有している。
具体的データ
その他
- 中課題名:気候区分に対応した安定多収・良品質大豆品種の育成と品質制御技術の開発
- 中課題整理番号:112f0
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2004~2015年度
- 研究担当者:猿田正恭、高田吉丈、岡部昭典、菊地彰夫
- 発表論文等:
1)猿田ら(2016)近中四農研報、15:1-15
2)高田ら「たつまろ」 品種登録出願29142 (2014年4月18日)