短稈で耐倒伏性に優れ飼料用米生産に適した水稲新品種候補系統「みなちから」

要約

水稲「みなちから」は、温暖地西部において出穂期は"中生"、成熟期は"やや晩生"に属する縞葉枯病抵抗性の粳系統である。大粒で玄米外観品質が劣り、一般食用品種との識別性がある。短稈で耐倒伏性に優れ、粗玄米収量が多いため飼料用米生産に適する。

  • キーワード:水稲、飼料用米、飼料イネ、短稈、多収
  • 担当:自給飼料生産・利用・飼料用稲品種開発
  • 代表連絡先:電話084-923-5346
  • 研究所名:近畿中国四国農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

国際的な飼料価格の高騰から国内で生産可能な飼料用米への注目が高まっている。温暖地西部での生産に適した品種として、飼料用米・稲発酵粗飼料兼用の「ホシアオバ」、「クサノホシ」、インド型の「北陸193号」、「タカナリ」、「もちだわら」などが育成されている。しかし、長稈である飼料用米・稲発酵粗飼料兼用品種やインド型品種は、成熟期以降に倒伏しやすいものが多い。そこで、短稈で耐倒伏性に優れ、飼料用米生産に適した多収品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「みなちから」は、耐倒伏性に優れる中間母本系統「関東PL12」を母に、粗玄米の収量性が高い「関東飼226号(後の「モミロマン」)」を父とする交配後代より育成した品種である(表)。
  • 普通期移植栽培での出穂期は「ホシアオバ」より3日遅く育成地(瀬戸内沿岸部)では"中生"に属する(表)。登熟日数が長く、成熟期は「ホシアオバ」より9日程度遅く「北陸193号」並で"やや晩生"に属する粳種である(表)。
  • 稈長は、「ホシアオバ」より26cm、「北陸193号」より9cm短い"短稈"で、耐倒伏性は「ホシアオバ」より強い"かなり強"であり、成熟期以降も倒伏せず「北陸193号」より強い(表)。また、直播(表面散播)栽培でも倒伏は見られず直播栽培にも適する(表、図1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子Pibを持つと推定され、圃場抵抗性は葉いもちが"強"である(表)。縞葉枯病には"抵抗性"であり、白葉枯病抵抗性は"やや弱"である。脱粒性は"難"である。
  • 粗玄米収量は、「ホシアオバ」より9%多く、「北陸193号」より7%少ない。籾千粒重は30g程度、玄米千粒重は25g程度で、粒大は"大粒"であり、外観品質は"下中"で劣ることから、一般食用品種との識別性がある(表、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 栽培適地は温暖地西部以南の平坦地である。香川県、山口県、岡山県、佐賀県などで200ha以上の普及が見込まれる。
  • 登熟日数が長いため、登熟期間の温度や日数を十分に確保できる地域や作型で栽培する必要がある。
  • トリケトン系4-HPPD阻害型除草成分(ベンゾビシクロン、テフリルトリオン、メソトリオン)に感受性が高いため、それらを含む除草剤は使用しない。

具体的データ

その他

  • 中課題名:低コスト栽培向きの飼料用米品種及び稲発酵粗飼料用品種の育成
  • 中課題整理番号:120a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(エサプロ、国産飼料、自給飼料)
  • 研究期間:2005~2015年度
  • 研究担当者:中込弘二、出田収、重宗明子、松下景、春原嘉弘、石井卓朗、前田英郎、飯田修一
  • 発表論文等:中込ら「みなちから」品種登録出願第30998号(2016年3月31日)