プレスリリース
ロータリ耕うんと同時に耕盤を均平化する技術を開発

- 湛水直播などの安定栽培に貢献 -

情報公開日:2010年2月 2日 (火曜日)

ポイント

  • ロータリ耕うん機の上下動を抑制して高精度な耕盤の均平化ができる技術を開発

概 要

(独)農研機構【理事長 堀江 武】生研センターでは、水田の耕盤を均平にする技術について研究を進めてきました。本技術をほ場表面の凹凸を解消するレーザ均平技術と組み合わせ、一定の作土深さになるよう水田土壌を均平にすることによって、生育むらのない稲作りに貢献することができます。湛水直播栽培では、出芽の安定や除草効果向上、雑草発生の抑制への貢献も期待されます。

本技術は、我が国の水田耕起作業で主流となっているロータリ耕うん装置とレーザ制御装置を使い、レーザの基準水平面に合わせて耕うん装置の高さを一定に保ちながら耕うんを行うもので、耕うん装置の上下方向への振れを抑える機能を追加することによりレーザ受光器の感度を上げて作業を行うことが可能となり、耕盤均平性能が高まりました。

予算

運営費交付金

特許

特許3979520「複合耕転装置」、特開2006-204231「複合耕転装置」


詳細情報

開発の背景と経緯

均平は稲作の基本と言われるように、水田では土壌の均平度を高めることが重要です。大区画ほ場を中心にレーザ均平機が普及し、効率的な作業法など利用技術も進化してきましたが、表面ばかり均平に仕上げても耕盤の凹凸いわゆる不陸があっては、代かき後の不等沈下によって再び表面に凹凸を生じる場合があります。とくに湛水直播栽培のように、播種後の部分的な停滞水による出芽不良の防止や除草効果の向上が望まれる場面では、耕盤も含めた均平が必要となります。現在、比較的高低差の小さいほ場で耕盤の均平に用いられるレーザレベラは、作業速度5~8km/hの高能率な作業機ですが、目標とされる耕盤均平度±2cmは決して十分な均平性能とは言えません。そこで、より高精度な、±1cm程度の均平度達成を目標とした耕盤均平技術の開発に取り組んできました。

耕盤均平型耕うん技術の概要

  • レーザを使って耕うんしながら耕盤を均平化する技術で、ロータリにチゼルのような固定刃を組み合わせた複合型の耕うん装置を、耕うん用の作業機として使用します。
  • ロータリの後方に取り付けたチゼルが作業機の上下の振れを抑えるため、レーザ受光器の感度を±5mm程度に高めてもハンチングを起こすことなくスムーズな耕うん作業が可能となります。ロータリ後方に取り付けるチゼルは、試験では5本使用していますが、2本程度でも振動低減効果があることを確認しています。
  • 前年に合筆したばかりのまだ段差が残るほ場60×50m、田面均平度は標準偏差1.2cm、±1cm以上の割合43%)で、等間隔にチゼルを5本配置し、作業速度約0.6m/s、感度±5mmでレーザ制御によるロータリ耕うん作業を行ったあとの耕盤の均平度は、標準偏差0.7cm、±1cm以上となった範囲は10%以下となりました。

今後の予定・期待

ほ場表面のみならず耕盤も均平にすることは、直播栽培における出芽の安定のほか、除草効果の向上や雑草発生の抑制、一定作土深さによる生育むら減少など移植栽培も含めた水稲栽培全般への安定化効果が期待されます。

本技術の活用には、レーザー受光器の制御感度を高めるための改造が必要となりますが、レーザ機器がすでに導入されているところでは、すぐにでも取り組むことのできる技術です。今後は、さまざまな土壌条件への適応性を確認するなど技術の完成を図り、実用化を目指します。

用語の解説

ハンチングとは
ある設定値を目標とする制御で、設定値に達したのち行き過ぎ、反対方向へ戻そうとして再び行き過ぎるという動作の繰り返し、このような設定値付近で振動する現象をハンチングと言います。本研究では、レーザ光基準水平面に合わせようとしてロータリが頻繁に上下動する様子をハンチングと称しています。

図1 レーザ受光器を装着したチゼル付きロータリ耕うん装置,図2 複合耕うん部の構造

図3 レーザを使って耕うんしたときの作業機の昇降動作

図4 作業前の田面と作業後の耕盤面の状況