開発の背景と経緯
ほ場の石礫はバレイショのみならず、ニンジンや豆類等の収穫時の能率低下、農産物の傷、機械の損傷の原因となっています。コンベア、大型回転ふるい(ト
ロンメル)で砕土・石礫分離を行う慣行の石礫除去機は、高価で、かつ、作業能率が低く、春先の繁忙期に短時間で除礫作業を行えないため、普及が進んでいません。
そこで、平成19年度から農林水産省プロジェクト「担い手の育成に関するIT等を活用した新しい生産システムの開発-超低コスト土地利用型生物生産技術
の開発」、「水田の潜在能力発揮等による農地の周年有効活用技術の開発」において、東洋農機株式会社と共同で高能率な石礫除去機の開発を行っています。平
成20~21年度に駆動型ディスクを使用した土壌の堀上技術の開発、平成22年度に石礫除去機の開発を行い、平成23年度に実証試験を行いました。開発機
は平成24年度中の市販化を予定しています。
開発機の概要
- 開発機(図1)は、土塊を堀取り、砕土し、石礫を分離して回収する機械です。
- 開発機は、PTO駆動、けん引式で、全長5.7m、全幅2.9m、全重3.2tで、慣行機(トロンメル式)よりも全長がコンパクトで、取り回し易く、作業
幅は1.87m(30%UP)、作業深さは最大30cm、石礫タンクの容量は約1.4m3です。適応トラクタは73.5kW(100PS)以上です。
- 土塊の堀取りは、2枚のディスクとショベル型の堀取刃で行うことで、効率的に掘取りができるために、広い作業幅での作業が可能となりました。
- 砕土・石礫分離は、星形ロールコンベア、バーコンベアで行います(図2)。星形ロールコンベアは土塊を粉砕するとともに、隙間から粉砕した土壌を落とし、
石礫を分離します。バーコンベアの回転数で、星形ロールコンベア上を流れる土塊の速度を制御し、砕土性能を変えることができます。バーコンベアの回転数を
より速くすると、星形ロールコンベア上を流れる土塊の速度が上がるため、土塊の分離性能は低下しますが、30mmより小さい石礫を除去することも可能です。
- 星形ロールコンベアは目詰まりが起こりにくく、麦跡等の前作の残渣があるほ場でも、作業が可能です。
作業性能
- 褐色低地土における作業精度は、作業深さ25cm、作業速度0.70m/sで、作業前の石礫割合(容積比)が7.4%から、作業後に0.1%以下となり、良好な結果が得られました(表)。また、作業深さ30cmでは作業速度0.35m/sで作業が可能でした。
- 作業深さ25cm、作業幅1.87m、作業速度0.71m/s(試験区面積0.38ha)での作業では、実ほ場作業量0.35ha/hと、慣行機(トロンメル式)に比較して、約95%向上しました(図5)。
- 作業深さ25cm時のけん引抵抗は、慣行機が作業速度0.15m/sで27kNに対し、開発機は作業速度0.54m/sでも23kNと小さく、高速作業が可能となりました。
今後の予定
開発機は、平成24年度中の市販化を予定しており、石礫の多い畑作ほ場の除礫に活用できるほか、バレイショのソイルコンディショニング栽培法に適用できます。
また、開発機は、バレイショを栽培している輪作農家で大きな問題となっている野良イモの防除効果でも期待されています。
用語の解説
石礫除去機
耕うん作業、播種など農業機械化に支障をきたす要因であるほ場内の石礫を効率的に取り除くための作業機で、除礫方法としては排除集積、排除埋設、たん水埋没、クラッシング等があります。石礫除去機は、ストーンピッカとも言われ、排除集積の機械です。
石礫
土地改良計画指針(北海道農政部)では、石を小礫(30~50mm)、中礫(50~100mm)、大礫(100~200)と区分し、30mm以下は土砂として扱い、改良の目標は5%未満としています。
PTO駆動(Power Take Off駆動)
作業機を駆動させるために、車両駆動用のエンジンから回転動力を取り出す方式
トロンメル
ふるい面が円錐形または、円筒形をなし、その内面に土壌を供給し、水平またはわずかに傾斜させた軸の回りで低速回転させるふるい機構です。
野良イモ
収穫時に回収できなかった小イモがほ場に残り、次の作物が成育中に発芽して、雑草となったイモのことを言います。
ソイルコンディショニング
バレイショ栽培において、播種前に予め土塊、石礫を除去する栽培法のことで、収穫時の作業能率向上、労力削減、生産物の品質向上等のメリットがあります。播種床造成栽培法とも言われます。

