プレスリリース
自動整列で根と葉切りができるたまねぎ調製装置を開発

- 府県産たまねぎの調製作業を大幅省力化 -

情報公開日:2011年12月 6日 (火曜日)

ポイント

  • 府県産の貯蔵乾燥させたたまねぎの根と葉切りが人力の2倍の速度で作業できます。
  • 1玉ずつ向きを揃えながら、自動で精度良く根と葉切りができます。
  • 平成24年度中の市販化を目指しています。

概要

(独)農研機構 生研センターでは、第4次農業機械等緊急開発事業において、株式会社クボタ、松山株式会社と共同で、従来多くの労力が必要であった貯蔵乾燥させたたまねぎの根と葉切り作業を、自動で精度良く行うことができるたまねぎ調製装置(以下、「開発機」)を開発しています。開発機は平成24年度中の市販化を目指しています。

開発機は、コンテナ単位で投入されたたまねぎを1玉ずつ分離し、向きを一定に揃え、根の切除と葉を2cm程度の長さに切り揃えることができます。2名1組で作業を行い、1秒に1個程度の速度でたまねぎを調製することができます。時間当たり3500個程度のたまねぎを処理することができ、これは人力の2倍程度に相当します。

関連情報

予算:運営費交付金
特許等:出願中


詳細情報

開発の背景と経緯

わが国のたまねぎ栽培面積は24,000haで、北海道と府県でほぼ50%ずつの状況です。府県産たまねぎの場合、主に5~6月の梅雨の時期が収穫シー ズンにあたり、貯蔵性を高めるためには収穫後十分に乾燥させる必要があります。乾燥の方法としては、茎葉を束ねて「吊り小屋」と呼ばれる貯蔵乾燥用の小屋 に吊り下げて風乾する方法や、20kg容量のコンテナに入れて除湿乾燥施設で保管する方法などがあります。その後、ハサミで1玉ずつ根切り及び葉切りを 行って出荷しており、多くの労力がかかっています。作業者が1玉ずつ供給する簡易な調製装置もありますが、能率面からの改善が求められています。近年では 調製後の選果・出荷だけでなく貯蔵乾燥から調製作業の部分についても農協が受託し、生産者の負担軽減に努めている事例も出てきましたが、調製作業の時期だ け多くの労力を確保することが難しく、産地からはたまねぎの調製作業を省力化する新たな技術開発が強く求められていました。

農研機構・生研センターでは、平成20年度から第4次農業機械等緊急開発事業において、株式会社クボタ、松山株式会社と共同で、府県産の貯蔵乾燥させた たまねぎを対象として根と葉を自動切除する調製装置の研究開発に着手しました。平成21年度では、たまねぎの搬送と根・葉切り方法について基礎的な試験を 行いました。その結果、根の部分を上にしてたまねぎを搬送する方法が最も効果的と判断されました。平成22年度では、たまねぎの向きを揃える整列方法につ いて検討しました。平成23年度では、切断精度を高める改良を行いました。改良した装置については、佐賀県農業試験研究センター、兵庫県農林水産技術総合 センターの協力を得て実証試験を行い、性能および改良点の把握に努めるとともに、平成23年度には佐賀県白石町および兵庫県南あわじ市で現地検討会を実施 しました。

開発機の概要および性能

  • 開発機は、供給部、整列調製部、選別部※、排出部※から構成されており、全長5.2m、全幅2.5m、全高1.9mの大きさです。AC100Vを電源とし、屋内に定置して利用する装置です(図1、表)。(※:選別部と排出部は、オプション扱い)
  • 供給部には20kgコンテナで2個分のたまねぎを貯留することができ、上昇コンベアなどで整列調製部にたまねぎを供給していきます(図2)。
  • 整列調製部では、供給されたたまねぎを1個ずつ分離し、向きを揃えて根切り、葉切りを行います。根は残りのないように切除し、葉は2cm程度の長さに切り揃えるようにします(図3、4)。
  • 選別部では作業者が腐敗球などを除去するとともに、調製が不十分であったものを再調製することができます。2名1組で作業を行うことを基本とし、1名が供給部へのたまねぎの補給および周辺作業、他の1名が選別部での作業を行います(図5、6)。
  • これまでの試験の結果、開発目標としていた1秒に1個程度の作業速度で、適切り率は8割程度の性能を有することを確認しました。開発機を利用すると時間当たり3500個程度のたまねぎを処理することができ、これは人力の2倍程度に相当します。

活用面と留意点

  • 農協などの共同調製施設に設置して利用することを想定しており、府県産のたまねぎ生産の省力化への貢献が期待されています。
  • 開発機での作業は2名1組を基本とし、1名が供給部へのたまねぎ補給および周辺作業、他の1名が腐敗球の選別および再調製を行います。
  • 本装置は、貯蔵乾燥されたたまねぎを対象とした構造のため、十分に乾燥が進んでいない青切りたまねぎを調製した場合、玉の部分に傷が付く恐れがあります。
  • 選別部、排出部は、設置レイアウトや利用する収納容器によって異なるためオプション扱いです。

今後の予定

今後、メンテナンス性や耐久性の向上などを図り、平成24年度中の市販化を目指しています。

図1.2.3 たまねぎ調製装置等

図4.5.6 調整前後のたまねぎ等

参考

  • 北海道産と府県産たまねぎの作業体系上の違い
    北海道産のたまねぎは、春に定植し秋に収穫します。収穫後には、タッパーと呼ばれる機械で葉切りだけを行い出荷しています。夏から秋にかけての北海道は 天候も良くたまねぎもほ場にある状態で乾燥が促進されます。乾燥したたまねぎの根は、収穫作業の途中である程度は取れていくため、根切りという作業を特に 行っていません。
    これに対して府県産のたまねぎは、主に11~12月に定植し翌年の5~6月ころが収穫シーズンです。ちょうど梅雨の時期で、たまねぎは水分をたくさん含 んだ状態で、根も葉も元気なままです。収穫後、吊り小屋や除湿乾燥施設で乾燥させますが、根や葉は長いまま残っているので出荷前に調製する必要がありま す。葉は2cm程度の長さに切り、根は残りの無いように切ります。このように切り取る程度が違うため、1玉ずつ手作業で調製するしか方法が無く、調製作業 に多くの労力がかかっていました。
  • 貯蔵乾燥したたまねぎと青切りたまねぎの違い
    府県産たまねぎは、3~4月ころ収穫できる極早生、4~5月上旬に収穫できる早生、5~6月ころに収穫する中晩生に大きく分けることができます。中晩生 のたまねぎは、吊り小屋や除湿乾燥施設で貯蔵乾燥してから農家や農協などの施設で調製して出荷します。これに対して、極早生や早生のたまねぎは掘り取り 後、すぐに畑で根と葉を調製し出荷します。このように貯蔵せずに畑で根葉切りして出荷されるものを「青切りたまねぎ」とか「新たまねぎ」と呼んでいます。