プレスリリース
可変径式TMR成形密封装置を開発

- 牛も喜ぶ高品質発酵TMR!大きさを自由に設定 -

情報公開日:2012年2月 7日 (火曜日)

ポイント

  • TMRを酪農家が要望した大きさにロールベール梱包する装置です。
  • 高密度梱包により高品質の発酵TMRができます。
  • ロール発酵TMRの広域流通に適しています。

概要

農研機構 生研センターでは、第4次農業機械等緊急開発事業において、(株)IHIスターと共同で、発酵TMRの梱包作業の自動化による低コスト化、品質の安定化やTMR流通の拡大に寄与する可変径式成形密封装置(以下、「開発機」)を開発しています。

開発機は、TMRを農家のニーズに応じて、直径が0.85~1.1mの範囲で異なる高密度なロールベール(以下、「ベール」)に成形し、ラップフィルムで密封する作業を自動で行います。平成24年度中の市販化を目指しています。

関連情報

予算:運営費交付金

特許等:出願中

 


詳細情報

開発の背景と経緯

近年、輸入飼料価格が高騰する中、飼料生産・調製作業の外部化による酪農畜産経営の効率化が求められており、サイレージや食品製造副産物を積極的に利用できる発酵TMR(粗飼料と濃厚飼料を混合し発酵処理した飼料)の普及が期待されています。しかし、現状のTMRセンターで主流のフレコンバッグ方式では、1詰込み作業の労力が大きい、2梱包密度が低い、3カビが発生する、等の課題がありました。そこで、発酵TMRの梱包作業の自動化による低コスト化、高密度化による品質の安定化、さらに各農家のニーズに応じたサイズに梱包することにより、TMRセンターの販路拡大に寄与できる可変径式成形密封装置の開発が求められています。

そこで農研機構・生研センターでは、平成20年度から第4次農業機械等緊急開発事業において、株式会社IHIスターと共同で、微細な材料を含むTMRを農家のニーズに応じて、直径の異なる(直径0.85m~1.1m、幅0.86m)高密度なベールに自動的に成形密封できる装置の研究開発を進めています。

開発機の概要および性能

  • 開発機(図1、図2)は、荷受部、可変径式成形部、密封部などから構成されます(図3、表1)。可変径式成形部の成形室(幅0.86m)は、幅広ベルト可変径式で、ベールの直径を0.85~1.1mの範囲で成形できます。本装置は、37kW以上のトラクタPTOまたは電動モータで駆動します。
  • 本装置は、荷受部に投入されたTMRを、コンベア等によって成形室に供給します。成形室に供給されたTMRはロール状に成形されます。設定した径または質量になると供給を停止し、ネット結束した上で、成形室から排出後、ラップフィルムによる密封を自動で行います。成形中に還元部に落ちた「こぼれ」は、成形室に再供給されます。
  • 材料内訳や含水率が異なるTMR(表2)を、最小径ベールと最大径ベールのベール質量比で1.7~2.0倍、乾物密度は300kg/m3(粗飼料主体のものは200kg/m3)以上のベールに成形密封できます(表3)。毎時処理量は8~18t/h程度で、成形から密封までのこぼれによる損失割合は1%以下です。
  • ベールの大きさは、直径と質量のいずれかで設定できます。質量設定は、対象TMRの最小径から最大径の質量範囲内で設定でき、設定値に対する質量の差は±10kg程度です。
  • ベールに調製し、密封したTMR(2010年8月~11月に調製)を二ヶ月後に品質調査したところ、カビの発生は認められず、嗜好性も良好でした。

活用面と留意点

  • TMRの製造・販売を行うTMRセンター、飼料会社、生産組合等の組織による利用に有効です。
  • セミコンプリートフィードや食品製造副産物が多くを占めるものは、成形が困難な場合があり、粗飼料の混合割合を考慮する必要があります。

今後の予定

TMRセンターでの長期連用試験を継続し、課題を抽出して、平成24年度中の市販化を目指します。

用語の解説

TMR
Total Mixed Rationの略。混合飼料のうち、牛が必要とするすべての栄養成分を含み、混合することで選択採食することができないようにした飼料のこと。
TMRセンター
上記TMRを調製し、地域の酪農家などに販売、供給する組織のこと。
フレコンバッグ方式
フレコンバッグの内側に入れたビニール袋にTMRなどの混合飼料を梱包、脱気処理して発酵TMR調製を行い、農家に供給する方式のこと。
セミコンプリートフィード
混合飼料のうち、牛が必要とする栄養成分の一部を含み、混合することで選択採食することができないようにした飼料で、不足する栄養成分は給与時に、牛群に合わせて給与する。
食品製造副産物
食品の製造、加工などの過程において、食用に供されず、廃棄されたもの。適切な処理をして保存性を高める必要があるが、飼料への利用が期待される。

図1 畜産農家でのTMR成形密封試験風景、図2 TMRセンターでの設置状況図3 開発機(左)と梱包したロールベール(右)