プレスリリース
粘りの少ない水稲新品種「越のかおり」を用いた米麺を製品化

- 農研機構と地元自治体、企業が共同開発 -

情報公開日:2008年12月10日 (水曜日)

農研機構 中央農業総合研究センター北陸研究センターは、「キヌヒカリ」にインド原産の在来種「Surjamukhi」の高アミロース性(粘りが少ない性質)を導入した新品種「越のかおり」を育成しました(平成20年8月5日に出願公表)。

北陸研究センター、株式会社自然芋そば、上越市及び、えちご上越農業協同組合は共同で「越のかおり」の製麺適性を検討し、このたび、株式会社自然芋そばから米麺が販売されることになりました。「越のかおり」の米麺は、新潟の新たな地域特産物として利用され、米の消費拡大につながることが期待されます。

この成果は、農林水産省委託プロジェクト「低コストで質の良い加工・業務用農産物の安定供給技術の開発」による研究成果です。


詳細情報

《背景とねらい》

我が国の食料自給率は、カロリーベースで40%であり、米の需要を拡大するためには、麺やパンなどへの米粉の利用を積極的に進める必要があります。米麺の製品化が一部で試みられていますが、コシヒカリ等の良食味品種を使った麺は、表面の粘りが強く、麺離れが悪いことが欠点とされています。麺離れが良く、製麺適性を持った、粘りが少ない高アミロース水稲品種を育成し、地元の製麺企業、市町村、JAとの共同研究により、地域特産物として米麺の製品化を図ることを目的としました。

《成果の内容・特徴》

  • 短粒の日本型品種であるため(写真1、2)、選別、精米などに既存の調整方法が適用できます。
  • 白米のアミロース含有量は、「コシヒカリ」より15ポイント程度高く、麺に加工した場合に麺離れが良い商品の開発が可能です(表1、写真3)。
  • 「コシヒカリ」より、出穂期は2日ほど早く、成熟期はほぼ同じで、育成地では“中生の早”に属します。稈長は、「キヌヒカリ」並の“やや短”、穂長は“やや短”、穂数は「コシヒカリ」よりやや少ない“中”、草型は“偏穂重型”です。耐倒伏性は「コシヒカリ」より強く、“やや強”です。収量性は、標準的な標肥区では「コシヒカリ」よりやや少収ですが、施肥が多い場合では「コシヒカリ」並です。千粒重は、「コシヒカリ」よりやや重い“中”です(表2)。製麺適性には、標肥・多肥栽培間で差はありません。

《品種の名前の由来》

新たな需要が見込まれる米麺の原料として、米どころを香り高く彩るイメージを表しました。

《製品の特長》

素材の良さを損なわないように、時間をかけて水挽きで製粉した米粉を使い、じっくりと蒸気をあてる「蒸製法」により造りました。麺はコシが強く、切れにくく、米本来の味が活かされています(写真4)。

表1 越のかおりの白米中のアミロース含量と製麺時の麺離れ

表1 越のかおりの白米中のアミロース含量と製麺時の麺離れ

表2 生育特性(育成地)

表2 生育特性(育成地)

写真1.越のかおりの籾と玄米

写真1.越のかおりの籾と玄米
(左:越のかおり、中:コシヒカリ、右:キヌヒカリ)

写真2.越のかおりの草姿

写真2.越のかおりの草姿
(左:越のかおり、中:コシヒカリ、右:キヌヒカリ)

写真3.越のかおりの米麺 写真4.製品「越のかおり米の麺」
写真3.越のかおりの米麺
(左:越のかおり、右:春陽(中アミロース))
写真4.製品「越のかおり米の麺」