プレスリリース
平成23年度 除染技術実証試験事業

- 「放射性物質を含む汚染土壌等からの乾式セシウム除去技術の開発」について(お知らせ) -

情報公開日:2012年2月22日 (水曜日)

ポイント

福島県内の放射性物質に汚染された農地土壌(60,000Bq/kg超)から、復旧・復興用土工資材等に利用可能なレベル(クリアランスレベル:100Bq/kg以下)まで含有する放射性セシウムを分離・除去(99.7%以上)する技術開発を行いました。

概要

  • 本実証試験は、平成23年度「除染技術実証試験事業」(内閣府から独立行政法人日本原子力研究開発機構への委託事業)において、太平洋セメント株式会社が、日揮株式会社、東京電力株式会社、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター及び株式会社太平洋コンサルタントと連携して応募、昨年11月9日に採択され、行ってきたものです。
  • 除染を推進していく上で、大量に発生する除去物の減容化は重要な課題となっていますが、放射性物質に汚染された土壌(以下「汚染土壌」という。)から放射性セシウム(以下「放射性Cs」という。)を効率的に除去・分離することは容易ではありません。本実証試験では、小型回転式昇華装置を使い、福島県内の農地土壌等を試料として放射性Csの揮発を促進する熱処理条件を検討し、土工資材等に利用可能なレベルまで放射性Csを分離除去しその含有量を低下させることに成功しました。
  • なお、この除染技術について、独立行政法人日本原子力研究開発機構、太平洋セメント(株)及び農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は共同で、3月8日に福島県郡山市で開催される「農業及び土壌の放射能汚染対策技術国際研究シンポジウム」(主催:農林水産省、国際科学技術センター(ISTC))において、その内容を発表する予定です。

農業及び土壌の放射能汚染対策技術国際研究シンポジウム

日時:平成24年3月8日~10日
会場:福島県郡山市(ユラックス熱海・ホテルハマツ)
シンポジウムに関する詳細については農林水産省ホームページ又は専用ホームページ(http://www.congre.co.jp/isrca/)を参照。
※シンポジウムの取材を希望される方は、「農業及び土壌の放射能汚染対策技術国際研究シンポジウム」運営事務局に事前登録してください。


詳細情報

開発の背景と経緯

本実証試験は、平成23年度「除染技術実証試験事業」(内閣府から独立行政法人日本原子力研究開発機構への委託事業)において、太平洋セメント株式会社が、日揮株式会社、東京電力株式会社、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構中央農業総合研究センター及び株式会社太平洋コンサルタントと連携して応募、昨年11月9日に採択され、行ってきたものです。

除染を推進していく上で、大量に発生する除去物の減容化は重要な課題となっていますが、放射性物質に汚染された土壌(以下「汚染土壌」という。)から放射性セシウム(以下「放射性Cs」という。)を効率的に除去・分離することは容易ではありません。本実証試験では、小型回転式昇華装置を使い、福島県内の農地土壌等を試料として放射性Csの揮発を促進する熱処理条件を検討し、土工資材等に利用可能なレベルまで放射性Csを分離除去しその含有量を低下させることに成功しました。

結果の内容

  • まず、非放射性セシウム(以下「Cs」という。)を用いた予備試験により、Csを吸着・固定した土壌では、Csの揮発促進剤(塩化カルシウムCaCl2)の添加の有無にかかわらずCsの揮発率は低いが、複数の無機系の高性能反応促進剤を組み合わせて添加することによりCsの揮発率が大幅に向上するという知見を得ました。(図1)。
    図 1 各種模擬試料の昇華温度とCs揮発率との関係
  • この知見を基に、放射性Csによる汚染土壌を用いた昇華試験を行い、放射性Csを効率よく揮発させる条件を検討しました。昇華試験は、まず、管状電気炉で基本条件を検討後、小型回転式昇華装置を用いて連続昇華試験を実施しました。実際の汚染土壌に高性能反応促進剤を添加・混合後、管状電気炉および小型回転式昇華装置で1300°C以上で昇華試験を行った結果に表1のとおりです。いずれの汚染土壌も放射性Csがよく揮発し、目標である100 Bq/kg(建設資材の許容値以下)を達成できました。
    表1 実汚染土壌を用いた昇華試験の結果
  • 本実証試験により、放射性Cs(Cs-134,Cs-137)を含有している土壌へ高性能反応促進剤を添加することによって放射性Csを分離・除去し、クリアランスレベル以下まで放射性Cs濃度が低下した浄化処理物を得ることを確認しました。この結果を参考にして、飯舘村クリアセンター(福島県相馬郡飯舘村)に設置した小型回転式昇華装置を用いて毎時2kg程の汚染土壌を昇華する連続昇華試験を実施し、60,000Bq/kgレベルの実際の汚染土壌を50Bq/kg以下にするという良好な結果が得られています。
  • なお、本実証試験では、揮発した放射性Csは、冷却後、集塵機で「濃縮セシウム塩」として回収することにより、大気中への放射性Csの放出は検出限界(0.1Bq/m3)以下にすることができています。

用語の解説

乾式セシウム除去技術
放射性物質に汚染された農地土壌に、高性能反応促進剤を添加して小型回転式昇華装置を用いて高温で連続昇華させることにより、土工資材等に利用可能なレベルにまで、当該汚染土壌からその含有する放射性セシウムを分離・除去する技術のこと。

回転式昇華装置
炉心管が回転する方式の管状電気炉のこと。

揮発
液体が気体となって発散することで、今回の実験では放射性セシウムが吸着した土壌から気体となって発散すること。本来、固体から気体へと相転移する現象は"昇華"であるが、汎用的に用いられる"揮発"と表現した。

昇華試験
セシウムを含む土壌に高性能反応促進剤を加えて加熱処理することにより、セシウムを昇華させ、土壌を浄化する試験である。

高性能反応促進剤
土壌に強固に結合しているセシウムが熱処理によって昇華できるように土壌の状態を変えるとともに、セシウムが昇華をすることを促進させる働きをする。
図 2 技術概要図

図 3 管状電気炉

図 4 フィールド試験装置 小型回転式電気炉

図 5 回転炉内部

図 6 焼成物