プレスリリース
飼料用イネ「夢あおば」で水田利用率・粗飼料自給率の向上に貢献

情報公開日:2005年3月24日 (木曜日)

要約

食料自給率の向上や水田の有効利用のため、各地で稲をホールクロップサイレージにして牛のエサとして利用し始めています。

中央農業総合研究センター・北陸研究センターでは、「コシヒカリ」の収穫と競合しない早い時期に刈り取りでき、倒れにくく湛水直播栽培に適する早生の稲発酵粗飼料用(ホールクロップサイレージ用)品種「夢あおば」を育成するとともに、その栽培から乳牛の飼料として牛乳を生産するまでの技術体系の研究も行っています。

「夢あおば」の普及で期待される効果

食料自給率の向上や水田の有効利用のため、稲をホールクロップサイレージにして牛のエサとして利用することが各地で始まっています。北陸研究センターでは、北陸地域の主力品種である「コシヒカリ」より早く収穫でき、湛水直播栽培に適して倒れにくいホールクロップサイレージ用稲品種の育成を目指しました。また、新品種の低コストな湛水直播栽培による栽培方法や効率的な収穫方法、飼料用イネの乳牛への給与方法など、牛乳の生産に到るまでの一貫した利用技術体系の確立を目指しています。

「夢あおば」について

「夢あおば」は、平成2年に「上321」と「奥羽331号」(後の「ふくひびき」)を交配して平成16年に品種になりました(写真1、表1)。出穂期が北陸地域では「コシヒカリ」よりも1週間程度早く、またホールクロップサイレージの収穫適期が出穂後30日程度(黄熟期)であることから、「コシヒカリ」の収穫前に余裕を持って収穫することができます。稈長は「ふくひびき」よりも8cmほど長く、穂長がやや長く穂数が少ない穂重型です。湛水直播での苗立ち率が良好で、耐倒伏性は極強なので湛水直播に適します。また、乾物収量は「トドロキワセ」よりも2割程度多収で、飼料用イネとしての適性を備えています。

表1 夢あおばの主要特性
表1 夢あおばの主要特性

写真 夢あおば

飼料用イネ生産から牛乳生産までの技術体系について

農家(上越市、和島村 )の水田で、実際に「夢あおば」の栽培を湛水直播栽培で行いました。水田の走行にも適する専用収穫機で収穫し、生産されたロールベールを計量したところ、乾物で1トン/10a以上の収量を得ることができました。また、収穫時期の予測モデルや収穫作業のビデオ解析から効率的な収穫方法についても考案しました。生産された稲発酵粗飼料を乳牛に給与したところ、嗜好性や消化性は抜群に高いことがわかり、牛乳生産に利用できるようになりました。飼料用イネは、発酵して吟醸酒にも似たフレイバーを放つサイレージになることから、できた牛乳には「吟醸ミルク」と名付けました。

解説

ホールクロップサイレージ(Whole Crop Silage)
とうもろこしや稲のように、従来は子実をとることを目的に作られた作物を、繊維の多い茎葉部分と栄養価の高い子実部分を一緒に収穫してサイレージに調製したものです。こうして利用することにより、乳用牛や、肉用牛にとってバランスがとれ、栄養収量の高い飼料が生産できます。

「ふくひびき」
東北地方で一部飼料用の品種として利用されています。

「トドロキワセ」
新潟県の飼料用イネの認定品種になっています。