要約
中央農業総合研究センター・北陸研究センターでは、排水の悪い重粘土で耕うんと同時に畝立てと大豆の播種を行う作業機を開発しました。この作業機を使用して大豆を栽培すると、生育前半の湿害が防がれ、収量が増加します。
研究の背景とねらい
北陸、特に新潟地域では排水が悪い重粘土水田が広く分布しています。近年、この水田を畑転換して大豆生産の振興が図られていますが、大豆は生育前半に湿害にあうと、後半までその影響を受け、収量が減少します。通常の大豆栽培では、最初平らに耕うんし6月下旬から7月にかけて中耕培土を行い畝の形を作ります。しかし中耕培土の時期は梅雨にあたり作業が遅れることがあります。そこで生育前半の湿害を防ぐために最初の耕うんの時に畝を作り、発芽がスムーズになるように耕うんと同時に播種と鎮圧を行うことができる作業機の開発に取り組みました。
開発機の特徴と効果
1.作業機の特徴
作業機は、重粘土で土が細かくなりやすい逆転ロータリを使用しています。その耕うん軸を改造し、耕うん爪を畝の中心に向けて曲がりを揃えて取り付ることで、耕うんと同時に畝立てができます(図1)。さらに後方に施肥播種機を取り付け、すべて一工程で作業ができるようにしています(図2)。
図1 作業機の爪配列と畝断面形状
図2 作業機の構成
2.作業機の性能
耕うん+75cm×2条作畝+施肥・播種を同時に行う作業能率は、1日当たり約1haです。また作業できるトラクタは約30馬力からです。
3.大豆畝立て栽培の効果
最初から畝になっているために、土の中の水分が低くなり、また土の中へも酸素が十分に行きわたるため、大豆の生育が盛んになります。特に大豆の粒が大きくなることにより、大豆収量が1~2割増加します(表1、2)。
表1 畝立て大豆の大粒割合
表2 畝立てと大豆収量
使用上の留意点
作業速度を早くすると土塊が大きくなりますので速度を低め(0.3m/s以下)にする必要があります。また畝立て栽培でも地表排水の促進は重要なので、畝間を明渠につなぎ、畝間の水が排水されるようにすることが重要です。