プレスリリース
タイ国立電子コンピュータ技術センターと共同研究に関する覚書を締結

情報公開日:2003年5月26日 (月曜日)

要約

独立行政法人農業技術研究機構・中央農業総合研究センター(中央農研)はタイ国立電子コンピュータ技術センター(NECTEC=National Electronics Computer Technology Center、http://www.nectec.or.th/eindex.php)と農業における情報技術利用等に関する共同研究について2003年5月28日午前11時(日本時間)より包括的な覚書を締結します。調印式は両研究所をインターネットビデオ会議システムで結んで行います。

NECTECはタイ科学技術開発庁傘下の情報技術研究所で、東南アジア地域を代表する研究機関として、農業農村情報化や気象災害等の環境情報技術など幅広い応用分野を対象に研究開発を進めています。また、中央農研では農業情報研究部を中心に情報技術の農業や農村への応用について研究開発を推進しています。

両研究所は、アジア太平洋高度ネットワーク協議会(APAN)やアジア農業情報技術連盟(AFITA)などの活動を通してこれまで情報交換を続けてきました。その中で、双方が必要としている情報技術には共通点が多く、相互に技術協力することで、多くの研究成果を両国の農業・農村へ波及させることが期待されることから共同研究を進めることになりました。

共同研究では、中央農研のインターネット上に分散するデータベースとプログラムを連携させる技術や無線LAN式の環境モニタリングシステム技術と、NECTECのインターネット地理情報システム技術や多言語機械翻訳技術などを組み合わせることで、全く新しい農業向けグリッド技術の研究開発を行います。この技術開発により、データ資源やプログラム資源などを言語やデータ構造の違いを乗り越えて広くアジア地域で共有可能にし、病害虫の多国間移動や干ばつ・水害など直面する農業・環境問題の解決を支援するためのシステム構築することが期待されます。


詳細情報

用語説明

グリッド技術
ネットワーク上に分散して存在するデータやプログラム、ハードウエアといった資源を効率的に共有し連携させるための技術。それぞれのデータベースやプログラム、コンピュータ等の本来の機能や自律性をいっさい損なわない点がこれまでの考え方と大きく異なる。
ネットワーク上のコンピュータの余剰パワーを活用して仮想的にスーパーコンピュータを実現する例が有名であるが、農業や環境関連では分散する多様なデータベースを連携させるデータ・グリッドと呼ばれる技術がむしろ重要である。
たとえば、気象データ、土壌データ、作物データといったデータベースが、病害発生予測プログラムや品種選定プログラムといったそれらを必要とする複数のソフトによって効率的に共有可能になる。また、たとえば、地域ごとに異なる形式で提供される気象データベースを仮想的に統一フォーマットに見せかけることによって、フォーマット毎にプログラムを書き換えるという作業も不要になる。
グリッド技術により、死蔵しがちだったデータやプログラムの利用効率が高まるばかりでなく農業向けの各種の意思決定支援システムの開発効率の向上とコストダウンが期待できる。

AFITA(The Asian Federation for Information Technology in Agriculture)
アジア地域における持続可能な食物生産性のために必要な情報の共有と意思疎通を目的とする農業に関する情報研究を進めるために1998年に設立された非営利団体。
現在参加は、日本、中国、韓国、タイ、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピン、バングラディシュ、マレーシア、モンゴルが加盟している。
会長 梅方権教授(中国農業科学院)、事務局長 二宮正士(農業技術研究機構)
URL http://www.apfita.org/OW/home.htm

APAN( Asia-Pacific Advanced Network:アジア太平洋高度研究情報ネットワーク)
APANは次世代のインターネットプロジェクトを通してアジア - 太平洋の地域経済の活性化を図る目的で1997年に設立された非営利の国際コンソーシアム。日本,韓国、 シンガポール、オーストラリア、タイ、フィリピン,マレーシア、 インドネ シア、米国、カナダ、中国、台湾などが加盟。
我が国においてはAPANの活動として、文部科学省、農林水産省、経済産業省及び総務省等のそれぞれが整備しているアジア太平洋諸国間のネットワーク を相互に接続し、有効に活用することにより域内の研究情報流通を促進するプログラムを推進している。平成9年8月に「日本APAN連絡協議会」(会長 後藤滋樹 早稲田大学教授)を設置し、日本国内におけるAPANに関する活動について連絡調整をしている。
URL http://apan.net/