プレスリリース
カバークロップ(被覆植物)を利用した休耕田の管理法

- 休耕田の雑草を完全に防除 -

情報公開日:2002年9月12日 (木曜日)

要約

カバークロップ(被覆植物)を用いて休耕田の雑草発生を完全に抑え、かつ水田の地力を高める「休耕田の維持・管理法」を開発しました。この方法によって、休耕を含む水田の新しい作付体系が確立できます。遊休水田の管理や転作作物の導入が困難な休耕田の荒廃を防止する技術として、今後の普及が期待されます。

背景とねらい

今日、雑草が生い茂った耕作放棄水田をあちらこちらで見かけるようになりました。平成13年度現在、約97万haの水田で生産調整が実施されています。これら水田の大半は、大豆、麦類、飼料作物および野菜などの転作作物が作付けられ、有効に利活用されています。しかし、10万haを超える水田が不作付けの状況にあり、これら水田の遊休化や耕作放棄が憂慮されています。このようことから、さまざまな事情により転作作物の作付が困難な水田の荒廃を防ぎ、水田としての機能を維持・保全するための効率的な管理法が求められています。

そこで、カバークロップ(被覆作物)を周年にわたり栽培することにより、雑草の発生を抑えながら、水田の地力を維持できる休耕田の管理法と、休閑を取り入れた水田の新しい作付体系の開発に向けて研究を進めました。

成果の意義

  • 水稲収穫後の10月上中旬に冬作のカバークロップとしてヘアリーベッチまたはイタリアンライグラスを播種します。
  • ヘアリーベッチとイタリアンライグラスの生育が衰える翌年の6月中下旬に、夏作のカバクロップとしてエンサイ(サツマイモの仲間で湛水した水田でも生育でき、夏季の葉菜としても利用できる。)をヘアリーベッチとイタリアンライグラス群落の上から散播します。
  • エンサイは夏季におう盛に生育し、ヘアリーベッチとイタリアンライグラスに代わって水田を被覆し、夏雑草の発生を抑制します。その効果は、休耕田の除草管理として使用されている茎葉処理除草剤(グルホシネート液剤)2回散布(6月中旬、8月中旬)による雑草管理よりも優りました。(表1)。
  • エンサイは降霜により枯死しますが翌年の田植時期まで枯れたままの状態で水田を被覆するため、冬雑草や春先からの夏雑草の発生はほぼ完全に抑えました(写真)。
  • 周年カバークロップを鋤込んだ跡地の水稲は、休耕田跡の水稲に比べて約 10%増収しました(表2)。
  • 本成果は、1~2年間程度の短期間の休耕水田の管理法として有効であり、水稲の生産調整期間における水田の維持・保全法として活用できます。また、具体的な利用例として図のような作付体系が想定されます。

図1 具体的な作付け体系例

表1 周年カバークロップの導入が雑草発生量に及ぼす影響

表2 周年カバークロップ導入跡地の水稲の収量