プレスリリース
無線インターネットで圃場をモニタリングするフィールドサーバ

- ホットスポット機能でグリーンツーリズムの魅力アップにも -

情報公開日:2002年6月25日 (火曜日)

要約

無線LANで屋外の気象データや画像などの計測データをWebで見ることができる低コストの小型モニタリングロボットを開発。内蔵のホットスポット機能によって農村のユビキタスネット化を促進。

はじめに

農業生産は局地的な気象の影響を受けるため、局地気象や作物の生育状況などの現場情報を知ることが非常に重要です。とくに栽培方法の改善や的確な生産管理を行うためには圃場ごとの詳細なデータが必要ですが、現地に計測機器を設置しデータを集めることは、コストの問題などから難しいのが現状です。

気象観測装置のような精密機器は湿気、砂ぼこり、高温などに弱く、収納ケースだけでもかなりの高額になります。また、データを伝送する通信手段の確保も大きな問題です。

このような問題を解決するため、急速に進歩しているIT及び独自の計測技術をベースにして、高機能でありながらポケットマネーで利用できるくらいに低コストで、しかも設置や操作が簡単にできる小型計測ロボット「フィールドサーバ」を開発しました。

フィールドサーバの特徴

フィールドサーバは、圃場に設置するだけで、気温、湿度、日射量、土壌水分などの気象データや画像による作物の生育状況などを観測し、データを蓄積することができます。無線 LANでインターネットに接続され、観測データは内蔵のWebサーバ(ホームページ)で見ることができます(図1、2)。しかも、周囲がホットスポット(無線LANでインターネットが利用できる場所)になります。

最近、首都圏のカフェ、空港、駅などでは集客力向上を狙ってホットスポットを作っていますが、フィールドサーバを設置した農村はひと足早くユビキタスネット(どこでもネットが使える)環境となり、グリーンツーリズムの魅力アップのツールとして活用できます。また、デジタルカメラなどの機器を簡単に接続できることから、産直における販売促進、圃場への不法投棄の防止や不審者の監視などにも利用できます。

フィールドサーバの製作や管理業務などは地域における雇用創出のシーズとしても期待されます。実際、試作・製造では北海道のIターン農業者に冬場の仕事として手伝って頂きました。

図1 フィールドサーバがつくる無線ネットワークとホットスポット

図2 ブラウザでモニタリングの結果を表示した例

フィールドサーバの仕様

フィールドサーバは独自開発のフィールドサーバエンジン(コア基板)と市販の無線LANアクセスポイント基板で構成され、使用目的や設置場所に応じて機能を柔軟に変えることができます(図3)。その共通仕様は表の通りです。

フィールドサーバの詳細な解説や製作方法、実際にモニタリングされている様子は以下のホームページで公開しています。

図3 フィールドサーバのラインナップ(用途や設置場所にあわせたカスタマイズの例)

表 フィールドサーバの仕様

今後の展開

現在、テストと実運用を兼ねて、フィールドサーバは中央農研と北海道芽室町に設置されていますが、さらにアメリカ等国内外の数カ所にも設置する予定です。また、植物の生理情報、CO2等のガス濃度、機械作業状況(速度、位置、収穫量等)など計測できる項目を増やしつつ、更なる小型化・低コスト化を図る予定です。最終的にはフィールドサーバ全体をワンチップ化するとともに、昆虫の生態のモニタリングや圃場から食卓までを結ぶ農産物トレーサビリティシステムの支援機能の開発も目指しています。

*この研究は、農林水産省委託研究「データベース・モデル協調システム」(略称「協調システム」プロジェクト)で行われました。