背景・経緯
農業法人等の大規模化が進んでおり、移植時期・収穫時期を広く分散できる品種に対する要望が高まっていました。また、多収で60kgあたり生産コストの低減が可能で、外食・中食需要も満たせる品種が求められていました。これらに対応するため、「コシヒカリ」より早生で、収量性が高く、炊飯米の外観が良い極良食味品種「つきあかり」を育成しました。
内容・意義
- 宮崎の在来品種※1「かばしこ」を母とし、極良食味品種「北陸200号(後の「みずほの輝き」」を父としたF1に多収の「北陸208号」を交配して育成した品種です。
- 育成地(新潟県上越市)での出穂期は「コシヒカリ」よりも1週間早く、「あきたこまち」とほぼ同じです。成熟期も「あきたこまち」とほぼ同じで、「コシヒカリ」より2週間早くなります(表1)。
- 穂数は「あきたこまち」よりも少ないですが、穂長は長く、草型は「偏穂重型」です。稈長は「あきたこまち」よりも短く、葉色は「あきたこまち」よりもやや濃い品種です(表1、写真1、写真2)。
- 耐倒伏性はやや強く、育成地での玄米収量は「あきたこまち」に比べて標肥栽培で9%程度、多肥栽培で8%程度の多収です。千粒重は「あきたこまち」よりも2g程度大きくなります(表2)。
- 玄米外観品質 は「コシヒカリ」よりも優れますが、「あきたこまち」と同等かやや劣ります(表2、写真3)。高温登熟はやや強ですが、腹白が出る場合があります。食味は「コシヒカリ」と同等以上の評価です。また、炊飯後4時間保温した場合でも「コシヒカリ」と同等以上の評価です(表3、表4)。
- 栽培適地は、「あきたこまち」の栽培が可能な東北中南部、北陸、関東以西です。
栽培上の留意点
- 玄米に腹白が出やすいので、過剰な穂肥、早期の落水、刈り遅れは避けてください。
- 縞葉枯病、白葉枯病に弱いため、常発地での栽培は防除を徹底してください(表5)。
- 過剰な施肥は倒伏および玄米タンパク含有量の増加による食味の低下を招きますので、地力にあわせた適切な肥培管理を行ってください。
品種の名前の由来:ご飯の外観が艶やかで輝くように見えることから命名しました。
今後の予定・期待
- 平成28年度より新潟県上越市で栽培の取り組みが始まっており、数年後には北陸地域を中心に数百haの栽培が見込まれています。
- ご飯の外観が艶やかで、食味が良く、4時間保温後も「コシヒカリ」と同等以上の評価であることから、中食・外食をはじめとする様々な用途への利用が期待できます。
用語の説明
在来品種:日本に昔から存在する品種。
写真1.「つきあかり」の圃場での草姿
(左:あきたこまち、中:つきあかり、右:ひとめぼれ)
写真2.「つきあかり」現地試験の圃場写真(新潟県上越市)
写真3.「つきあかり」の籾および玄米
(左:つきあかり、中:あきたこまち、右:ひとめぼれ)