プレスリリース
大粒で食味の良いブドウ新品種「サンヴェルデ」

- 「巨峰」と同時期に熟し、皮が剥けやすく、種なし栽培が可能な黄緑色品種を育成 -

情報公開日:2010年10月27日 (水曜日)

ポイント

  • 大粒で食味の良い黄緑色のブドウ新品種「サンヴェルデ」を育成しました。
  • 「巨峰」と同時期に収穫でき、種なし栽培が可能で、ブドウの需要拡大が期待できます。

概要

  • 農研機構果樹研究所【所長 長谷川美典】は、大粒で食味が良く、種なし栽培が可能なブドウ新品種「サンヴェルデ」を育成しました。
  • 「サンヴェルデ」は「巨峰」と同時期に収穫でき、果粒の大きさは14g程度、果皮は黄緑色です。「巨峰」、「ピオーネ」より噛み切りやすく硬い肉質で、食味が優れています。ジベレリン処理により種なし栽培ができます。
  • ブドウ生産は「巨峰」、「ピオーネ」等の大粒ブドウの種なし栽培が増加していますが、「巨峰」と同様に皮が剥けやすく、これらの品種とは果皮色などの外観や食味が異なる大粒品種が求められていました。「サンヴェルデ」の育成により、ブドウのさらなる需要の拡大が期待されます 。

詳細情報

新品種育成の背景・経緯

現在国内で栽培されている大粒ブドウは紫黒色の「巨峰」、「ピオーネ」が主体で、これらの品種は米国ブドウと欧州ブドウの中間で、やや噛み切りや すい肉質を持っています。欧州ブドウの生産は少ないのですが、ブドウの需要拡大のためには、欧州ブドウの性質である「噛み切りやすくて硬い」肉質を持つ大 粒ブドウ品種の育成が望まれます。また、近年は種なしブドウに対する需要が増えています。そこで、紫黒色の大粒ブドウ「ダークリッジ」に黄緑色の「センテ ニアル」を交配して、「巨峰」や「ピオーネ」とは異なる黄緑色で、皮が剥けやすく、「噛み切りやすくて硬い」肉質を持ち、なおかつ、種なし栽培ができる大 粒品種を育成しました。

新品種「サンヴェルデ」の特徴

  • 樹勢は強く、育成地(広島県沿岸部)における発芽期および開花期は「巨峰」よりやや遅く「ピオーネ」と同時期です。収穫期は8月下旬から9月上旬で、「巨峰」や「ピオーネ」とほぼ同時期です(表1)。
  • 果皮色は黄緑で、2回のジベレリン処理により、果粒重が平均14g程度の大粒種なしブドウになります(表1、図1)。
  • 糖度は21%程度、酸含量は0.4g/100ml程度になり、「巨峰」、「ピオーネ」より高糖度、低酸含量です。肉質は欧州ブドウに近く、崩壊性 (噛み切りやすい)で硬く、渋味もないため、食味が優れます。明確な香気はありませんが、わずかに特有の芳香が感じられます。果皮の剥けやすさは「巨峰」 並みです(表1)。
  • 開花後に花冠(花弁の集まり)が離脱しにくいため、果面にコルク状の汚れを生じやすい特徴があります。1回目のジベレリン処理後に花冠を落とすことにより、果面の汚れは軽減します。
  • 東北地方南部から九州地方までの「巨峰」栽培地域で栽培可能です。東北地方北部においては、場所により凍害が発生するので注意が必要です。なお、「巨峰」を対象とした体系で防除できます。

表1 「サンヴェルデ」樹性と果実特性

図1 「サンヴェルデ」の果実
図1 「サンヴェルデ」の果実

図2 「サンヴェルデ」の結実状況
図2 「サンヴェルデ」の結実状況

品種の名前の由来

ヴェルデ(verde)はイタリア語で緑色を表します。太陽のもとではぐくまれた緑色ブドウという意味で「サンヴェルデ」と命名しました。

種苗の配布と取り扱い

平成22年7月12日に品種登録出願(品種登録出願番号:第25,003号)を行い、平成22年9月15日に品種登録出願公表されました。

お問い合わせ先

果樹研究所 企画管理部 運営チーム
Tel 029-838-6443

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構 情報広報部 知的財産センター 種苗係
Tel 029-838-7390
Fax 029-838-8905

用語の解説

欧州ブドウと米国ブドウ
欧州ブドウはヨーロッパから西アジア原産のブドウで、降雨による裂果が生じたり、耐病性が弱いため、雨が多い我が国では露地栽培が難しい種類 です。一方、米国ブドウは、アメリカ東部原産のブドウをもとに交配・育成されたブドウで、耐病性、耐寒性が強く、我が国でも比較的容易に栽培できます。 「サンヴェルデ」は、欧州ブドウと米国ブドウの両方の血を引いています。
肉質
生食用の欧州ブドウは噛み切りやすく硬い肉質を持ち、生で食べるのに好ましいとされています。一方、米国ブドウは噛み切りにくい肉質を持って います。「巨峰」や「ピオーネ」はこれらの掛け合わせにより育成されており、両者の中間的な肉質を持っていますが、「サンヴェルデ」は欧州ブドウに近い肉 質を持っています。
種なしブドウ
ブドウにはもともと種子がない品種もありますが、小粒のため、日本での商業生産には向いていません。「巨峰」、「ピオーネ」はもともと種子が ある品種ですが、ジベレリンを花穂・果房に処理することによって、種なし果実として生産されています。「サンヴェルデ」も、同様に、ジベレリンを処理する ことによって種なし栽培ができます。
香気
「巨峰」や「ピオーネ」の香気は米国ブドウに由来するフォクシー香です。マスカット香は、欧州ブドウに由来します。「サンヴェルデ」には香気がほとんどありませんが、わずかに特有の芳香があります。
長梢剪定
ブドウ栽培において、翌年の新梢が出る結果母枝を6芽以上長く残して棚に配置する剪定法を長梢剪定と呼びます。一方、結果母枝を1~2芽で切り返す剪定を短梢剪定と呼びます。