プレスリリース
大果で食味の優れる黄肉モモ新品種「つきかがみ」

- 外観が美しく、晩生で糖度が高い生食用品種を育成 -

情報公開日:2010年10月27日 (水曜日)

ポイント

  • 黄肉の生食用モモ新品種「つきかがみ」を育成しました。大果で糖度も高く、食味が優れており、果面の荒れが少なく、無袋栽培が可能な晩生品種です。

概要

  • 農研機構果樹研究所【所長 長谷川美典】は、黄肉の生食用モモ新品種「つきかがみ」を育成しました。
  • 「つきかがみ」は、黄肉の主要品種「黄金桃」より1週間程度遅く収穫される晩生品種です。果実は350g程度と大果で、糖度も高く食味が優れています。また、裂果や果面の荒れが少なく外観が優れ、無袋栽培が可能です。「黄金桃」からリレー出荷できる生食用黄肉品種として今後の普及が期待されます。

詳細情報

新品種育成の背景・経緯

モモの果肉色には白色と黄色がありますが、日本の生食用品種の多くは白肉であり、黄肉は缶詰用の印象が強く、生食に用いられることはあまりありませんでした。ところが近年、消費者の品種多様化の要望が高まり、「黄金桃」のような生食用黄肉品種の果実が市場にも流通するようになっています。そこで、果樹研究所では黄肉品種のシリーズ化を図るため、これまで食味・品質の優れた黄肉品種として極早生の「ひめこなつ」、中生の「つきあかり」を育成してきました。さらにこの度、晩生の黄肉新品種を育成しました。

新品種「つきかがみ」の特徴

  • 樹勢は強く、樹姿はやや直立します。育成地(茨城県つくば市)における開花盛期は4月上旬で、「黄金桃」より2日程度早い時期です。花芽の着生が多く、花粉を有し、結実良好です。収穫盛期は8月下旬で、「黄金桃」より1週間程度遅い時期です(表1)。
  • 果形は扁円形から円形で、果実重は350g以上になり大果です。果皮の地色は黄色で着色はやや少なく、果皮の荒れが少なく外観が優れ、無袋栽培が可能です(表2、図1、図2)。
  • 果肉色は黄色、肉質は溶質で「黄金桃」よりも緻密です。糖度は「黄金桃」より低いものの13~14%程度あり、酸はpHで4.3前後と酸味は「黄金桃」にくらべてやや少なく、食味良好です(表2、図1)。核は離核です(図1)。
  • 灰星病、せん孔細菌病は、通常の薬剤散布により防除できます。
  • 既存のモモ栽培地域で栽培が可能です。「黄金桃」の後に成熟する生食用黄肉品種として有望です。

表1「つきかがみ」の栽培特性(農研機構 果樹研究所)
表1つきかがみの栽培特性

表1「つきかがみ」の果実特性(農研機構 果樹研究所)
表2つきかがみの果実特性

図1 つきかがみの果実
図1 「つきかがみ」の果実<

図2 つきかがみの結実状況
図2 「つきかがみ」の結実状況

品種の名前の由来

鏡に映った月のように綺麗な黄色で、果実の表面が滑らかなことから「つきかがみ」と命名しました。

種苗の配布と取り扱い

平成22年7月12日に品種登録出願(品種登録出願番号:第25002号)を行い、平成22年9月15日に品種登録出願公表されました。

お問い合わせ先

果樹研究所 企画管理部 運営チーム
Tel 029-838-6443

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構 情報広報部 知的財産センター 種苗係
Tel 029-838-7390
Fax 029-838-8905

用語の解説

黄肉モモ
果皮と果肉が黄色になるモモのグループ。缶詰用モモの多くが黄肉だったため、日本では黄肉モモを缶詰用モモと感じる消費者が多く、近年まで生食用品種には稀な性質でした。
黄金桃(おうごんとう)
生食用黄肉モモの主要品種です。8月中下旬頃から収穫される晩生品種で、果実が大きく、甘味が多く酸味もあり、食味が良いことからしだいに栽培が増えています。しかし、果皮の荒れが多く、裂果が発生します。
有袋栽培と無袋栽培
果実に袋をかけて栽培する方法を「有袋栽培」、袋をかけないで栽培する方法を「無袋栽培」といいます。有袋栽培は、裂果防止や着色促進、無着色果生産な どの目的で行われます。他にも果実を病虫害から守る効果もありますが、袋をかける作業に多大な労力を必要とします。
花粉の有無
モモは自家結実性(自分の花粉で結実する性質)であるため、花粉の有無で結実が左右されます。花粉が有る品種は人工受粉の必要が無く、結実が安定しています。
モモの肉質
モモの肉質は、「溶質」、「不溶質」、「硬肉」の三つのタイプがあります。溶質は果肉の軟化が早い肉質で、日本の生食用品種のほとんどが溶質です。不溶 質はゴム質とも言われ、果肉の軟化が遅く、弾力があり煮崩れし難いため、缶詰加工にも適しています。硬肉は成熟してもほとんど軟化しない肉質です。
粘核と離核
果肉と核(種)が離れない性質を「粘核」、離れる性質を「離核」といいます。
灰星病(はいほしびょう)
糸状菌(カビ)を病原とするモモの重要病害です。主に成熟果に発生し、果実を腐敗させます。
せん孔細菌病
細菌を病原とするモモの重要病害です。主に葉と果実に発生し、葉ではせん孔症状(穴が空く)と落葉がみられ、果実では亀裂を伴う病斑となります。