プレスリリース
ウメ新品種「翠香」

- 梅酒・梅ジュース加工に適したウメ品種を育成 -

情報公開日:2009年10月20日 (火曜日)

ポイント

梅酒や梅ジュースなどの飲料用加工に適したウメ新品種「翠香」(すいこう)を育成しました。他の品種にはない芳香があり、上質の梅酒や梅ジュースを作ることができます。

概要

農研機構果樹研究所【所長 福元 將志】は、梅酒や梅ジュースの加工原料に適したウメ新品種「翠香」(すいこう)を育成しました。ウメの主要品種「南高」と同時期かやや早く収穫される中晩生品種です。果実は35g程度、梅酒や梅ジュースにすると他の品種にはない芳香があります。特に完熟果を使用した場合は、酸味が多く香りが強い上質の梅酒や梅ジュースになります。

近年は味を意識したこだわりのある梅酒などの製造が増加していることから、「翠香」の育成により、ウメの消費拡大が期待されます。


詳細情報

新品種育成の背景・経緯

ウメ果実の用途は主として、梅干し加工を目的として加工業者に販売される漬け梅用、家庭での梅酒・梅ジュース加工を目的として市場流通する青梅用、そして酒造会社や飲料会社で使用する梅酒等飲料用の3つがあります。国内のウメ出荷量のうち、全体の約40%が梅酒等飲料の加工原料として利用されて おり、ウメの主要な消費形態となっています。近年、梅酒需要の高まりとともに、青梅を用いた梅酒だけでなく完熟果を利用した梅酒の製造など、味を意識したこだわりのある製品が増加しています。そこで、梅酒や梅ジュースなど飲料製造に適した品種の育成を行いました。

新品種「翠香」の特徴

  • 樹勢はやや強く、樹姿は開張と直立の中間です。花芽が多く着生し、結実良好です。育成地(茨城県つくば市)における開花期は3月上旬で、「南高」とほぼ同じで、「白加賀」より約5日早くなります。収穫期は6月下旬で、「南高」より3日程度早く、「白加賀」とほぼ同じです(表1)。
  • 果実重は35g前後で、「白加賀」よりも3g程度、「南高」よりも10g程度小さいですが、核(種子)が小さく果肉が多いのが特徴です。果形は楕円形で、果皮色は淡緑色です(図1、2)。果肉色は、成熟に伴って淡緑色から黄色に変化し、完熟果は黄橙色となります。酸含量は収穫盛期で5.9%程度です(表1)。
  • 「翠香」を用いた梅酒・梅ジュース製品には独特の芳香があります。特に完熟果を使用すると、酸味が多く香りが強い上質の梅酒・梅ジュースになります。
  • ヤニ果の発生が比較的多いため(表1)、梅酒や梅ジュースなどの飲料用原料に向いています。梅干し製品の品質は「南高」に劣ります。
  • かいよう病、黒星病には罹病性を示しますが、通常の薬剤散布により防除できます。
  • 東北から九州までのウメ栽培地域で栽培できます。また、花粉はできますが、自家不和合性を示すため、交雑和合性の品種を混植する必要があります。「南高」とは交雑和合性を示します。

図1 「翠香」の結実状況
図1 「翠香」の結実状況

図2 「翠香」の果実
図2 「翠香」の果実

表1 「翠香」の樹性および果実特性
表1 「翠香」の樹性および果実特性

品種の名前の由来

果実が翠色(みどりいろ)で美しく、梅酒にすると独特の香りがあることから「翠香」と命名しました。

種苗の配布と取り扱い

平成21年7月15日に品種登録出願(品種登録出願番号:第23909号)を行い、平成21年9月24日に品種登録出願公表されました。

お問い合わせ先

果樹研究所 企画管理部 運営チーム
Tel 029-838-6443

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構 情報広報部 知的財産センター 種苗係
Tel 029-838-7390
Fax 029-838-8905

用語の解説

南高(なんこう)
国内生産量第1位のウメの品種です。主産地は和歌山県で、漬け梅が主な用途となっています。

白加賀(しろかが)
国内生産量第2位の品種です。主産地は群馬県、埼玉県、茨城県、宮城県で、青梅・漬け梅兼用品種です。

自家和合性と自家不和合性
同じ品種の花粉を受粉した場合、正常に受精(種子形成)して結実する性質を自家和合性、受精しない性質を自家不和合性といいます。

交雑和合性と交雑不和合性
違う品種の花粉を受粉した場合、正常に受精(種子形成)して結実する性質を交雑和合性、受精しない性質を交雑不和合性といいます。

ヤニ果(外ヤニ、内ヤニ)
ウメの生理障害の一つで樹脂障害果ともいいます。果肉内の一部に水飴状の樹脂(ヤニ)がたまるものを内ヤニ、内ヤニが果皮表面に漏出したものを外ヤニと呼びます。ヤニ果を漬け梅にした場合、ヤニの部分がしこりとなるため食感が悪くなり品質が低下します。