新品種育成の背景・経緯
9月下旬に収穫される中~晩生のクリ品種は「筑波」と「石鎚」が中心です。特に「筑波」の生産に大きく偏重しているため、果実の生産が集中し、適正価格の維持等に問題が生じています。また、一般に、「筑波」以降に成熟する品種は「筑波」より果実品質が
劣ります。そこで、大果で食味が優れる中~晩生品種の育成を目的としました。
新品種「美玖里」の特徴
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樹勢は強く、やや直立性を示します。育成地(茨城県つくば市)における雌花の開花期は遅く、「石鎚」とほぼ同じです。収穫期は9月下旬で、「筑波」と「石鎚」の中間です(表1)。収量は「筑波」や「石鎚」と同程度です。
- 果実は28g程度で大きく、揃いは良好です(図1、2)。果肉は黄色で、デンプンが充実しているため、肉質は粉質で「筑波」や「石鎚」よりホクホクしています。甘味と香気は「筑波」と同程度で「石鎚」より多く、食味は良好です(表1)。渋皮の剥皮は従来のニホングリと同様に困難です。
- 双子果、裂果、腐敗果はほとんど問題になりません。虫害果の発生はやや高いですが、「筑波」や「石鎚」と同程度です(表1)。
- 高木になりやすいので、整枝せん定等の栽培管理を励行し、樹高を制御する必要があります。
- 全国のクリ栽培地域で栽培できます。

図1 「美玖里」の結実状況

図2 「美玖里」の果実

品種の名前の由来
美味しく(美)、外観が優れており(玖)、この品種が普及することで産地(里)が豊かになることを願い、また、旧系統名である「クリ筑波39号」の「39」にちなんで「美玖里」と命名しました。
種苗の配布と取り扱い
平成21年7月15日に品種登録出願(品種登録出願番号:第23913号)を行い、平成21年9月24日に品種登録出願公表されました。
お問い合わせ先
果樹研究所 企画管理部 運営チーム Tel 029-838-6443
利用許諾契約に関するお問い合わせ先
農研機構 情報広報部 知的財産センター 種苗係
Tel 029-838-7390
Fax 029-838-8905
用語の解説
筑波(つくば)
クリの主要品種の一つで、全国栽培面積の約30%を占めます。育成地では9月下旬に収穫される中生品種で、栽培性、果実品質ともに優良です。
石鎚(いしづち)
クリの主要品種の一つで、全国栽培面積の約6%を占めます。育成地では10月上旬に収穫される晩生品種です。
渋皮
渋皮(クリ果実の外皮(鬼皮)と果肉の間にある薄皮)のことです。一般的なニホングリの品種は渋皮を剥きにくい性質を持っています。
子果
一つの果実の中に渋皮に包まれた二つの子葉(果肉)が入ったもので、剥皮後の果実が小さくなるために加工には適していません。
肉質
粉質、粘質およびその中間の3タイプに分けられ、粉質は「ホクホク」と表現されることがあります。蒸しグリでは、粉質が粘質よりも品質が良いとされます。