プレスリリース
早生、良食味で外観美麗なカンキツ新品種「みはや」

- ウンシュウミカンとの区別性があり、商品性の高い品種 -

情報公開日:2012年3月22日 (木曜日)

ポイント

  • 11月下旬に成熟する早生カンキツ新品種「みはや」を育成しました。
  • 果皮が赤橙色で、外観美麗で、糖度が高く、酸味が少なく、食味の良い品種です。
  • 浮皮の発生は無く、美しい外観で芳香があるなど、ウンシュウミカンとは明らかに異なり、商品性の高い果実の生産が可能です。

概要

  • 農研機構果樹研究所は、早生で食味が良く、外観美麗なカンキツ新品種「みはや」を育成しました。
  • 「みはや」は、11月下旬に成熟期を迎える早生品種で、果皮が赤橙色で外観が美しく、糖度が高くて酸味が少なく、芳香があり、食味が優れています。また、多くが種なし果となり、じょうのう膜がやや軟らかく、食べやすい品種です。
  • ウンシュウミカンと比べ、果実は190g程度と大きく、果皮が赤く、浮皮が発生しにくい、芳香があるなどの特長があるため、ウンシュウミカンとの区別性が高く、商品性の高い果実の生産が可能です。
  • 機能性成分のβ-クリプトキサンチン含量はウンシュウミカンと同程度に多く含まれています。

関連情報

予算:運営費交付金
品種登録出願番号:26541


詳細情報

品種開発の背景・経緯

我が国におけるカンキツ類の栽培面積の60%以上はウンシュウミカンが占めています。特に年内に出荷されるカンキツ類の大部分がウンシュウミカンであり、この時期に出荷できる品種の多様化を図ることが消費拡大のうえで重要です。そこで、11月から収穫、出荷が可能で、食味が優れるとともに、剥皮しやすくて食べやすく、ウンシュウミカンと区別性のある品種の育成を目指し、選抜、育成したのが「みはや」です。

「みはや」は、「津之望」(12月に成熟し、良食味で結実性に優れる品種)に、「No.1408」(1月に成熟し、果皮が赤橙色で美麗な系統)を交雑して育成した品種です。

新品種「みはや」の特徴

  • 樹勢は中程度、樹姿は直立性と開張性の中間です。枝梢の長さは短く密生します。とげの発生は少なく短いため、栽培管理上の大きな問題はありません(表1)。
  • ウンシュウミカンに準じた防除を行えば、そうか病は発生しません。かいよう病は軽度の発生がありますが、栽培上問題となる程度ではありません(表1)。
  • 果実は平均190g程度、果皮は滑らかで、11月上中旬には赤橙色に完全着色し、外観美麗でウンシュウミカンとは明確に区別されます(表2、写真1)。
  • 剥皮のしやすさはウンシュウミカンに比べて劣りますが、手で剥ける品種です。また、ウンシュウミカンで問題となる浮皮は発生しません(表2)。
  • 果実の2/3以上が種なし果となり、じょうのう膜はやや軟らかく、食べやすい品種です(表2)。11月下旬より成熟期を迎えます。果汁の糖度は約12%、クエン酸含量は0.60%程度となり、糖度が高く酸味の少ない品種で、「アンコール」に似た芳香があり、食味が優れています。
  • 機能性成分のβ-クリプトキサンチン含量は果肉100gあたり1.48mgと高く、ウンシュウミカンの「興津早生」と同程度含みます(表3)。

表1 「みはや」の樹体の特性(農研機構果樹研究所カンキツ研究口之津拠点 2010年)

表2 「みはや」の果実特性(農研機構果樹研究所カンキツ研究口之津拠点 2010年)

表3 「みはや」の機能性成分含量(農研機構果樹研究所カンキツ研究口之津拠点露地栽培)

写真1 「みはや」の果実

栽培上の留意点

果汁のクエン酸含量は毎年、安定して早く減少し、年により酸が高いという問題はありません。一方、糖の蓄積は試験地や年によりばらつきが認められています。また、着果が多くなると糖度が高くなってくる傾向があります。
「みはや」は、年内収穫が可能であり、わが国のほとんどのカンキツ栽培地帯に適応します

今後の予定・期待

「みはや」は愛知県、熊本県、鹿児島県、福岡県、大分県の試験地において有望と評価されており、これらの産地から導入が始まると期待されます。

品種の名前の由来

「みはや」は、果皮が赤橙色で美しく、成熟期が早いことから命名されました。

種苗の配布と取り扱い

平成23年12月7日に品種登録出願(品種登録出願番号:第26541号)を行い、平成24年3月16日に品種登録出願公表されました。

平成24年4月に穂木の供給を開始し、早ければ平成24年秋に苗木の販売が開始される予定です。

お問い合わせ先:果樹研究所 企画管理部 運営チームTel: 029-838-6443

利用許諾契約に関するお問い合わせ先

農研機構 情報広報部 知的財産センター 種苗係 Tel: 029-838-7390 Fax: 029-838-8905

用語の解説

浮皮
果皮と果肉が分離する現象のことをいいます。ウンシュウミカンなどの皮がむきやすい品種で多く発生します。浮皮が発生した果実は、貯蔵・輸送中に腐敗しやすく、味が淡泊になる等の問題があります。浮皮は、成熟期に雨が多く、気温が高いほど発生しやすく、最近の多発の原因の1つとして温暖化の影響が指摘されています。

成熟期
果実の熟度が進み、風味、食味が十分な域に達した頃のことをいいます。カンキツの場合、果皮の着色が完了し、糖度がある程度蓄積し、クエン酸含量が1%以下となると概ね可食期と判断し、さらに熟度が進むと食味、風味が増した成熟期を迎えます。

じょうのう膜
果皮を剥いた時に現れる半月型の袋を「じょうのう」といい、これを包む膜のことを「じょうのう膜」といいます。これの「厚さ」や「硬軟」が、食べやすさや食味を大きく左右する要因になります。

β-クリプトキサンチン
ウンシュウミカンに特徴的に多く含まれる橙色のカロテノイド色素で、抗酸化物質として働きます。果樹研究所の栄養疫学研究において、骨粗しょう症や肝機能障害、動脈硬化、メタボリックシンドロームのリスクを下げる可能性を示唆する結果が得られ、最近注目されている機能性成分です。

そうか病
糸状菌(カビ)により引き起こされるカンキツの重要病害の1つです。果実表面にかさぶた状の病斑が出て、果実品質を大きく損ないます。春先からの殺菌剤による防除で発生を抑えることができます。

かいよう病
細菌により引き起こされるカンキツの最重要病害です。とげ等による傷口から感染し、葉、枝および果実表面にかさぶた状の病斑をつくり、果実の商品性を著しく損ないます。さらに発生程度が著しい場合は落葉、落果を引き起こします。現在のところ効果的な薬剤がないため発生の予防対策に努めることが重要となります。オレンジ、グレープフルーツ、ブンタン類などが弱く、一方、キンカン、ユズ、ポンカンなどは強い抵抗性を有していて防除の必要がありません。

完全着色
果皮の着色の進行具合を着色歩合といい、着色した果皮表面積の割合で表します。完全着色は果皮全面が着色した状態のことをいい、カンキツの収穫の目安の一つです。果皮全面が均一に着色することで商品性の高い果実となります。

アンコール
カリフォルニア大学で育成された晩生のミカン品種で、果皮の赤味と甘味の強さに加えて、スイートオレンジの甘い香りとは異なった特有の豊かな香りが特徴です。我が国では、主として施設栽培で300トン程度の生産量があり、3月頃より店頭で販売されています。